研究課題/領域番号 |
26450071
|
研究機関 | 独立行政法人理化学研究所 |
研究代表者 |
安部 洋 独立行政法人理化学研究所, バイオリソースセンター, 専任研究員 (90360479)
|
研究分担者 |
下田 武志 独立行政法人農業・食品産業技術総合研究機構, 中央農業総合研究センター, 主任研究員 (20370512)
|
研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
|
キーワード | 寄主特異性 / 植物防御 / シロイヌナズナ / ハモグリバエ |
研究実績の概要 |
ハモグリバエやアザミウマは農薬抵抗性を高度に発達させた難防除害虫であり、世界的に深刻な問題となっている。我々はこれまでにモデル植物を用いた、これらの虫害抵抗性に関わる植物防御機構の解析から、植物ホルモンであるジャスモン酸(JA)が制御する植物防御がこれらの虫害抵抗性において中心的な役割を果たしていることを明らかにしてきた。更に、JAが関わる防御機構を欠損させると、本来、ハモグリバエの寄主でなかったシロイヌナズナを寄主植物へと変換できることを報告し、固定的であると考えられていた寄主特異性が変換しうることを明らかにした。そこで、本研究課題においては、このような寄主特異性の変換に関わる現象メカニズムの解明を目指している。 当該年度においては、ハモグリバエ寄主特異性の変換に関わる植物代謝成分を同定することを目的として、メタボローム解析を中心に課題を推進した。メタボローム解析においては、アルカロイドなどの耐虫性に関わる因子と考えられる成分に加えて、広く植物に存在する二次代謝成分についても分析を行った。これまでに、シロイヌナズナ野生株と植物防御を消失させた変異株などの植物体におけるハモグリバエ食害後のメタボローム解析結果を比較することにより、ハモグリバエ寄主特異性の変換に関わる可能性が示唆される複数の候補成分を同定することに成功している。 同時に、上記植物体などを材料とし、ハモグリバエの嗜好性および産卵行動実験を行うことで、ハモグリバエ寄主特異性の変換に関連するハモグリバエの行動評価による、バイオアッセイ系の開発を行った。これにより、次年度において、得られた候補成分の評価を効率的に実施することが可能となった。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究課題においては、当該年度の研究計画を概ね順調に実施していると考えている。ハモグリバエは農薬抵抗性を高度に発達させた、世界的に深刻な問題となっている難防除害虫であるが、我々はこれまでにモデル植物を用いた解析から、本来、ハモグリバエの寄主でなかったシロイヌナズナを寄主植物へと変換できることを発見した。そこで、そのような寄主特異性の変換メカニズム解明を本研究課題では目指すこととした。幾つかの方法論により、同時に解析を進めているところであるが、我々が最も重要視しているのは、寄主特異性の変換に関わる植物代謝成分の同定である。このような成分が同定できれば、ハモグリバエの防除に大きな可能性を開くことができ、大きな社会的な意義を有しているからである。そこで、当該年度においては、そのような寄主特異性の変換に関わることが考えられる候補成分の同定を行うことを最も重要な達成目標と定め、複数のメタボローム解析を実施し、これまでに複数の候補成分の同定に成功した。これら成分の多くは、植物ホルモンであるジャスモン酸(JA)が制御する植物防御において耐虫性成分として機能することが予想されるものであり、現在、これら成分の機能解析を順調に進めているところである。
|
今後の研究の推進方策 |
当該年度において、当初の計画通り、シロイヌナズナ野生株と植物防御を消失させた変異株などの植物体におけるハモグリバエ食害後のメタボローム解析結果を比較することにより、ハモグリバエ寄主特異性の変換に関わる可能性が示唆される複数の候補成分を同定することに成功した。加えて、ハモグリバエの嗜好性および産卵行動実験を行うことで、ハモグリバエ寄主特異性の変換に関連するハモグリバエの行動評価による、バイオアッセイ系の構築に成功した。また、日長条件と寄主特異性の変換との関わりについても解析を進めており、多面的な視点から、ハモグリバエ寄主特異性の変換を解析する基盤を確立することができた。 来年度は、これら成果を更に発展させ、実際に寄主特異性の変換に関わる成分を特定するために、当該年度、取得に成功した複数の候補成分の機能解析を進めていく。同時に、これらの解析結果の論文化を目指し、寄主植物から非寄主植物への再変換が認められるかどうか検証するために、候補成分を欠損させた、あるいは、恒常的に蓄積した遺伝子組換え植物の作出を昨年度に引き続き実施する。同時に、メタボローム解析に加えて、トランスクリプトーム解析をも実施し、寄主特異性の変換に関わる現象メカニズムの解明を目指す。
|
次年度使用額が生じた理由 |
研究の進展により新たに作出することにしたシロイヌナズナ遺伝子組換え系統を実験に供することにより、より効果的な課題推進が可能となると考え、トランスクリプトーム解析に関わる物品の購入を延期したため。
|
次年度使用額の使用計画 |
予定していたトランスクリプトーム解析に関わる物品の購入に充てる。
|