研究課題/領域番号 |
26450072
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研究機関 | 弘前大学 |
研究代表者 |
青山 正和 弘前大学, 農学生命科学部, 教授 (60150950)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 土壌窒素 / ペプチド態窒素 / 比重分画 / 赤外分光分析 / 三次元蛍光分析 |
研究実績の概要 |
土壌有機態窒素の大部分はペプチドもしくはタンパク質の形態(ペプチド態)で存在しているが、その存在状態と由来に関する詳細な研究は、国内外のいずれにおいても、ほとんど行われてきていない。そこで本研究は、これまで行われてきていない新規な方法よって土壌中のペプチド態窒素の存在状態を解析することを目的とする。 平成26年度においては、ペプチド態窒素の存在状態を知るために必要な土壌の物理分画法の開発ならびに土壌中のペプチド態窒素の量的な把握を行うための手法として赤外線吸収スペクトル測定と蛍光スペクトル測定について検討を行った。 物理分画は重液中での分散と篩分けにより行い、団粒外軽比重画分、団粒内軽比重画分、重比重粗粒有機物画分ならびに有機・無機複合体画分に分けた。この際、重液として比重1.6g/mLのヨウ化ナトリウム溶液を用い、600J/mLの超音波で分散することが最適であることを明らかにした。また、次亜塩素酸ナトリウム処理による有機物の酸化分解処理前後の試料の拡散反射フーリエ変換赤外線吸収スペクトルを測定し、それらの差スペクトルを取得することによってペプチド態窒素の量的な推定が可能となった。この方法を適用して物理分画画分のペプチド態窒素の分布を推定したところ、ペプチド態窒素は主に有機・無機複合体画分に存在した。さらに、土壌のアルカリ抽出液について三次元蛍光スペクトルを測定すると、ペプチド態窒素由来の蛍光ピークが認められた。とくにアルカリ抽出液を酸性化することによって得られる腐植酸のアルカリ性高濃度尿素溶解画分において、ペプチド態窒素の蛍光が明瞭に認められた。ペプチド態窒素は、このアルカリ性高濃度尿素溶液に溶解する画分でも、DAX-8樹脂に吸着されない画分に主に存在した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
平成26年度に計画していた重液中での分散と篩分けに基づく物理分画による団粒外軽比重画分、団粒内軽比重画分、重比重粗粒有機物画分、有機・無機複合体画分へ分ける場合の最適条件の検討は完了した。また、平成26年度に計画していた次亜塩素酸ナトリウム処理による有機物の酸化分解処理を適用した拡散反射フーリエ変換赤外線吸収スペクトル測定によるペプチド態窒素の測定法の確立も完了し、物理分画した画分の赤外線吸収スペクトル測定が可能となった。なお、次亜塩素酸ナトリウム処理による有機物の酸化分解処理を適用した拡散反射フーリエ変換赤外線吸収スペクトル測定法に関しては、平成26年9月の日本土壌肥料学会で発表した。さらに、物理分画画分の赤外線吸収スペクトル測定に関しては、平成27年7月にカナダで行われる国際シンポジウムでの発表が決まっている。 ペプチド態窒素の抽出法として、アルカリ抽出および尿素分画による方法を検討し、これらの方法によってペプチド態窒素が抽出されることが三次元蛍光スペクトルの測定から確認された。この部分については、平成26年9月にギリシャで行われた国際腐植物質学会において発表した。ただし、フェノール抽出およびSDS抽出についての検討は時間的な余裕がなく、できなかった。それに伴って、加水分解後のアミノ酸分析によるペプチド態窒素の定量まで至らなかった。
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今後の研究の推進方策 |
平成27年度においては、平成26年度に十分行えなかったペプチド態窒素の抽出法の検討を行い、抽出されたペプチド態窒素の三次元蛍光による測定と加水分解後のアミノ酸測定との結果を突き合わせて、抽出されるペプチド態窒素の定量的な評価法を確立する。抽出に際しては、アルカリ抽出および尿素分画に加えて、フェノール抽出ならびにSDS抽出を検討する。 平成26年度に開発した物理分画法ならびに次亜塩素酸ナトリウム処理による有機物の酸化分解処理前後の拡散反射フーリエ変換赤外線吸収スペクトル測定によるペプチド態窒素の測定法と上記の抽出および三次元蛍光法による定量法を適用して土壌中でのペプチド態窒素の存在状態の解析を行う。 この際に用いる土壌として、有機態窒素の集積には有機物施用が大きく関わることから、有機栽培畑土壌についての検討を主としていた。しかし、ペプチド態窒素の存在状態には土壌の種類および土地利用が大きく影響する可能性が高いことから、有機栽培土壌に加えて、火山灰土である黒ボク土と非火山灰土である褐色低地土、褐色森林土を、畑地、水田、森林などの土地利用の異なる地点から採取する計画である。
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次年度使用額が生じた理由 |
実験補助者の雇用のための謝金を100千円計上していたが、実験補助者なしでも順調に実験が進んだため、使用しなかった。また、成果発表のための旅費も、計上した費用よりも少なくてすんだために残額が生じた。さらに、物品費に関しては、アミノ酸分析を予定していたが時間的な都合で来年度に行うことに変更したため、次年度に使用することとした。
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次年度使用額の使用計画 |
謝金および旅費の残額は、土壌採取のための旅費として使用し、物品費はアミノ酸分析に関わる物品の購入に使用する予定である。
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