高等植物における光合成機能と個体生育の改良を目指し、炭酸固定速度をco-limitしていると期待されるカルビンサイクル酵素Rubiscoおよびトランスケトラーゼを同時に増強したイネを作製することを目的とした。前年度では、Rubisco・トランスケトラーゼ同時増強イネにおいて、それぞれのタンパクとmRNAの量が増加していることを明らかにした。タンパク質の量としてはRubiscoで1.4-1.5倍、トランスケトラーゼで1.8倍に増加していたが、光合成特性への影響は見られないとの結論を得た。 今年度ははじめにこれまで得られた成果の論文化を行った。Rubisco・トランスケトラーゼ同時増強イネの結果に、Rubiscoあるいはトランスケトラーゼを単独で増強したイネや野生型の結果を対照実験として加えた。その結果、Photosynthesis Research誌の2017年3月号へ掲載された。 さらに、イネの光合成機能改良に向けた、カルビンサイクル改変の検討を行うこととした。Rubisco量を増強するとセドヘプツロース 7-リン酸のプールサイズが増加し、これ以降のカルビンサイクルの代謝が滞るため、光合成機能が改良されないと考えらえる。本研究の結果から、トランスケトラーゼの増強ではこれが解消されなかったと予測された。トランスケトラーゼ以降の反応に着目すると、ペントースリン酸の代謝を担うリブロース-5-リン酸 3-エピメラーゼの活性の文献値が非常に低かった。そこで、同酵素の増強および対照実験として抑制を行った遺伝子組換えイネの作製に着手した。
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