研究課題/領域番号 |
26450077
|
研究機関 | 名古屋大学 |
研究代表者 |
渡邉 健史 名古屋大学, 生命農学研究科, 助教 (60547016)
|
研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
|
キーワード | 水田土壌 / 硫酸還元菌 / DGGE / 群集構造 |
研究実績の概要 |
本研究は、水田土壌のメタン生成過程における硫酸還元菌の動態を、硫酸還元過程を触媒する酵素と水素生成を触媒する酵素をコードする遺伝子を対象とした解析により解明することを目的とする。本年度は、国内4カ所の水田(安城、大曲、筑後、黒石)より経時的に採取した水田土壌試料を対象に、硫酸還元過程の最終ステップを触媒する異化的亜硫酸還元酵素(DSR)のβサブユニットをコードするdsrB遺伝子を標的としたPCR-DGGE、定量PCR、クローンライブラリー解析を行い、水田土壌中の硫酸還元菌の群集構造を明らかにした。 PCR-DGGE解析の結果、全ての水田において土壌中の硫酸還元菌の群集構造は、水稲作付け期間(湛水期間)、落水期間に関わらず安定していたが、地域間の水田では異なった群集構造を形成していることが明らかになった。クローンライブラリー解析により、計472クローンのdsrB遺伝子を解析し、95%の類似度でOTUを作成して系統的多様性を調べた結果、Deltaproteobacteria綱、Firmicutes門、Nitrospira門の菌に近縁なdsrB遺伝子が得られたとともに、既知菌株と系統的に大きく異なるクラスターを形成するdsrB遺伝子が得られた。各水田におけるそれらの系統的分布は、大きな分類群で見ると類似していたが、全ての水田より共通して得られたOTUはわずかであり、同じ分類群の中でも地域間に違いがあることが明らかになった。加えて、安城および筑後水田の一部試料を対象に行った定量PCRの結果、土壌1gから約10の8乗のdsr遺伝子が検出され、安城水田では中干し期間にその値が大きく減少することが示された。 以上より、水田土壌には系統的に比較的類似した菌が安定した群集構造を形成しているが、地域により特徴的な菌が存在すること、また、土壌中の硫酸還元菌数は水管理の影響を受ける可能性があることが推定された。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初の計画では、平成26年度は水田土壌に生息する硫酸還元菌の群集構造を明らかにすることを目的としていた。平成26年度中に、安城、大曲、筑後、黒石の4カ所の水田より経時的に採取した土壌を対象に、分子生態学的な手法を用いて硫酸還元菌の群集構造を計画通りに解析することができた。定量PCRは全ての試料を対象に行ったわけではなく、今後必要に応じて未分析の試料も解析を進める必要があるが、おおむね順調に進展していると判断した。
|
今後の研究の推進方策 |
平成27年度は、平成26年度に得たデータを踏まえて、水田土壌がメタン生成段階に移行した条件下での硫酸還元菌の役割、特に硫酸還元菌の水素代謝について解析を進めて行く。また、安城水田土壌より分離した硫酸還元菌およびメタン生成古細菌を用いた培養実験を行い、硫酸還元時、メタン生成時での両者の水素代謝活性等を解析する。具体的には、硫酸還元反応に関わる酵素をコードするdsrB遺伝子に加えて、水素生成反応に関わるヒドロゲナーゼ酵素をコードするhydA遺伝子およびそれらの転写産物を対象として、発現のタイミング、発現量などの解析を進めて行く。
|