研究課題/領域番号 |
26450078
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
小林 優 京都大学, (連合)農学研究科(研究院), 准教授 (60281101)
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研究分担者 |
木野内 忠稔 京都大学, 原子炉実験所, 講師 (90301457)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | ホウ素 / 細胞壁 / ペクチン / KDO / 中性子捕捉反応 |
研究実績の概要 |
植物の微量必須元素ホウ素は、細胞壁においてペクチンのラムノガラクツロナンII領域(RG-II)を架橋し、多糖ゲルを形成させる役割を担っている。このゲル化の生理的意義を明らかにするため、架橋部位であるRG-IIの形成が阻害されたシロイヌナズナ変異株の解析を進めている。特に、RG-IIの特異的構成糖であるKDOの合成に必要な酵素CTP:KDOシチジリル転移酵素(CKS)に着目し、そのRNAi発現抑制株の解析を行った。用いたRNAi株はCKS遺伝子の発現量が野生型株の約1/2に低下しており根の伸長阻害等の表現型を示す。根伸長の速度論的解析、細胞壁成分の分析等から、RNAi株ではRG-II領域の形成抑制がペクチンのみならず細胞壁全体の形成を律速していることが示唆された。またその裏付けとして、RNAi株ではプロトプラストからの細胞壁再生が野生型株より遅延することも確認された。これらの知見は、細胞壁の新規構築におけるペクチンのゲル形成の生理的重要性を示すものである。 RG-IIの細胞内局在を解析するため、シロイヌナズナおよびタバコ培養細胞BY-2から切片を作成し、抗RG-IIポリクローナル抗体を用いた免疫電子顕微鏡観察を行った。その結果、細胞壁に加えて分裂中の細胞の細胞板にもシグナルが検出され、細胞壁前駆体である細胞板においてもペクチンはホウ素とRG-IIによりゲル化している可能性が考えられた。更に、細胞板のRG-IIが実際にホウ素と結合しているか解析する手段として、ホウ素中性子捕捉反応を利用したホウ素のin situ可視化法の適用を検討した。26年度はシロイヌナズナおよびハツカダイコンを用いて根組織の固定包埋と切片作成法について検討し、少なくとも組織レベルの観察には、川本法による凍結切片作成が有効であることを確認した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
RG-II合成阻害の影響の解析についてはプロトプラストからの細胞壁再生、HPLCあるいはHPLC-質量分析を用いた細胞壁KDO含量の測定系等の実験系が確立され、想定した結果が得られつつある。 中性子捕捉反応によるホウ素のin situ可視化については、原子炉の運転停止により当初計画どおりの照射実験は実施できなかったものの、切片作成法に関する条件検討が順調に進んでおり、今後照射実験を再開できれば実際のデータ取得を効率的に進められると考えている。
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今後の研究の推進方策 |
引き続きCKS RNAi株の解析を通じRG-IIの合成阻害の影響を解析する。CKS発現抑制が細胞壁構築に及ぼす影響については画像解析等を援用しより詳細な解析を行う。 ホウ素のイメージング解析については、中性子源として原子炉に加え加速器を利用することでより効率的に研究を進める。
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次年度使用額が生じた理由 |
京大原子炉は26年度に定期検査のため運転停止し、その後原子力規制委員会による新規制基準(本研究計画の応募後に制定)への適合審査が長引いているため年度内に運転再開に至らなかった。このためホウ素のin situイメージング解析における照射実験の実施回数が当初計画を下回り、関連する経費に残額が生じた。
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次年度使用額の使用計画 |
原子炉の運転再開になお時間を要すると考えられることから、ホウ素イメージング解析には加速器を照射中性子源として用いることを検討中である。26年度に使用しなかった経費はこのための条件検討や試料調製など関連する実験に充当する。
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