研究課題/領域番号 |
26450080
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研究機関 | 奈良先端科学技術大学院大学 |
研究代表者 |
深尾 陽一朗 奈良先端科学技術大学院大学, バイオサイエンス研究科, 特任准教授 (80432590)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 亜鉛 / 亜鉛欠乏センサー / bZIP19 / 転写因子 |
研究実績の概要 |
本研究では、植物において未だに発見されていない亜鉛欠乏を感知するセンサータンパク質の同定とその機能解析に取り組む。申請者は、bzip19変異体の解析や定量プロテオーム解析の結果から、転写因子bZIP19が亜鉛欠乏時の亜鉛恒常性維持に重要な役割を持つことを明らかにしている。そこで、bZIP19自身またはその相互作用タンパク質が亜鉛欠乏センサーとして働く可能性を考えている。 bZIP19には亜鉛が結合する可能性のある、システインとヒスチジンリッチな配列がある。bzip19変異体は亜鉛欠乏条件下において著しい生育阻害を示すことを指標に、システインとヒスチジンリッチな配列を削った変異型bZIP19配列をbzip19変異体に導入し、その表現型が回復するかどうかを調べた。しかし変異型bZIP19のmRNAは検出されず、分解されていると推察された。このためbzip19変異体の表現型が亜鉛欠乏条件下で回復する事も無かった。また、同じ配列を大腸菌に導入し、精製bZIP19タンパク質への亜鉛結合量をドットブロット解析または元素濃度測定装置ICP-OESにより測定することを計画したが、同様にbZIP19タンパク質タンパク質が発現することは無かった。 次に、bZIP19と直接相互作用するタンパク質には、亜鉛欠乏センサーまたは機能調節因子が含まれると考え、免疫沈降実験を行った。この実験では、bZIP19に2種類のタグ(GFPとFLAG)を付加した融合タンパク質をbzip19変異体において発現するシロイヌナズナ形質転換体を作製し、変異体の表現型が回復することを確認した。なお、プロモーターはbZIP19の自己プロモーターおよび35Sプロモーターを用いた。自己プロモーターを用いた場合、発現量の低さから、bZIP19自身が同定される事は無かった。一方、35Sプロモーターを用いた場合はbZIP19が同定され、相互作用因子の候補を複数得ることが出来た。現在、この変異体を取り寄せ、解析を進めている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
bZIP19への亜鉛結合解析については、bzip19変異体および大腸菌における変異型bZIP19タンパク質の発現が確認されていないことから、達成度は低い。一方、相互作用因子の探索においては、候補タンパク質を得ることが出来たことから、現時点では当初の目的を達成したと考えている。
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今後の研究の推進方策 |
bZIP19への亜鉛結合解析について、bzip19変異体における発現解析についてはbZIP19の自己プロモーターおよび35Sプロモーターを用いるなど行ったが、その発現が確認されないことから、大腸菌でのタンパク質発現の誘導系などを再検討する。 bZIP19の相互作用因子の探索では、候補タンパク質が得られたため、その変異体を取り寄せて解析をしている。ホモ個体を得た後、亜鉛欠乏条件下での表現型観察や、細胞内の亜鉛濃度測定を行う予定である。 また、bZIP19に発現制御される遺伝子は、亜鉛輸送体だけが実験的に証明されているが、本研究を推進する過程で亜鉛輸送には関わらない遺伝子についても発現制御されている可能性が示されてきた。このことから、bZIP19と直接的には相互作用しないが協調的に発現制御する因子やその因子が結合するシス配列を探索する。具体的には野生型シロイヌナズナおよびbzip19変異体を用いたマイクロアレイ解析を行い、bZIP19に発現制御される遺伝子群を明らかにする。次にそれら遺伝子のプロモーター配列に、bZIP19が結合するZDREモチーフの他、共通に存在するシス配列を見いだす。次にワンハイブリッド法を用いて、見いだされたシス配列に結合する転写因子を明らかにすることで、bZIP19に制御される遺伝子の発現機構を明らかにする。
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次年度使用額が生じた理由 |
研究計画の1つとしてプロテオーム解析によりbZIP19との相互作用タンパク質の同定を計画していたが、年度途中に質量分析計が長期にわたり使用不可となり、免疫沈降実験までは行っていたが、タンパク質同定を行うまでに時間を要した。
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次年度使用額の使用計画 |
繰り越した金額を用いて当初予定していたbZIP19と相互作用するタンパク質の機能解析を進める。またこの研究をサポートする研究員を短期間雇用する。
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