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2015 年度 実施状況報告書

植物の根において亜鉛欠乏を感知するセンサータンパク質の探索とその機能解析

研究課題

研究課題/領域番号 26450080
研究機関立命館大学

研究代表者

深尾 陽一朗  立命館大学, 生命科学部, 准教授 (80432590)

研究期間 (年度) 2014-04-01 – 2017-03-31
キーワード亜鉛 / 亜鉛欠乏センサー / bZIP19 / 転写因子 / 分泌ペプチド
研究実績の概要

本研究では、植物において未だに発見されていない亜鉛欠乏を感知するセンサータンパク質の同定とその機能解析に取り組む。申請者は、bzip19シロイヌナズナ変異体の解析や定量プロテオーム解析の結果から、転写因子bZIP19が亜鉛欠乏時の亜鉛恒常性維持に重要な役割を持つことを明らかにしている。そこで、bZIP19自身またはその相互作用タンパク質が亜鉛欠乏センサーとして働く可能性を考えている。
平成27年度から実施していた、bZIP19の配列内に存在する亜鉛結合領域と推定される配列を削った変異タンパク質を、bzip19変異体および大腸菌への導入を引き続き行ったが、bZIP19変異型タンパク質は発現しなかった。このためこの実験は断念することとした。次に、平成27年度にbZIP19と相互作用するタンパク質の候補を得ることができたため、該当するシロイヌナズナT-DNA挿入変異体を用いて解析したが、亜鉛欠乏に対して全く表現型を示さなかった。そこで、bZIP19が発現を制御する新規遺伝子として同定された3種類の分泌ペプチドに着目して研究を進めることとした。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

3: やや遅れている

理由

当初の目的であったbZIP19の相互作用因子は同定できていないことから、達成度は低い。一方、bZIP19およびそのホモログであるbZIP23の機能解析を実施し、論文を報告することができた(Inaba et al., 2015, Plant J.)。bZIP19は、プロモータ配列上に存在するZDREモチーフと呼ばれるシス配列に結合し、遺伝子発現を制御することが知られている。これまでZDREモチーフは主に亜鉛輸送体をコードする遺伝子のプロモータ配列上に存在することが知られていたが、新たに同定された分泌ペプチドのプロモータ領域にも存在することが示された。また我々は、分泌ペプチドのN末端側にシグナルペプチドが存在しており、N末端がプロセシングにより切断されること、またC末端側は成熟型の分泌ペプチドにおいても切断されないことを質量分析により明らかにした。このため、GFP、FLAGを分泌ペプチドのC末端側に付加し、35Sプロモータまたは自己プロモータにより発現制御させたシロイヌナズナ形質転換体を作成した。これらはbzip19変異体に導入した。この他、自己プロモータ制御下でGUSタンパク質を発現させる形質転換体を作成している。
またこれまでbZIP19とbZIP23は協調的に機能すると信じられていたが、bZIP19が制御する遺伝子群、bZIP23が制御する遺伝子群が存在し、それぞれ機能分担していることが示された。平成27年度に立案した通り、野生型シロイヌナズナ、bzip19およびbzip23変異体を用いたマイクロアレイ解析を行い、bZIP19およびbZIP23に発現制御される遺伝子群の候補を得た。bZIP19に発現制御される遺伝子は、亜鉛輸送体だけが実験的に証明されているが、本研究から分泌ペプチドなど亜鉛輸送には関わらない遺伝子についても発現制御されていることが示された。

今後の研究の推進方策

現在までの進捗状況に記したマイクロアレイ解析の結果から、少なくとも41種類の遺伝子がbZIP19またはbZIP23に発現制御されることが示唆された。そこで、シロイヌナズナの全遺伝子を対象に、プロモータ配列にbZIP19が結合するZDREモチーフを有する遺伝子を同定する。その結果、41種類の遺伝子のうちプロモータ領域にZDREモチーフを有していない遺伝子が複数存在する場合は、それら遺伝子に共通に存在する新規シス配列を見いだし、シス配列として機能するかどうかを明らかにする。具体的には該当する遺伝子のT-DNA挿入変異体を取得し、シス配列を欠落するゲノム配列を変異体に導入し、遺伝子発現量を調べることにより実施する。また先行して進めている、bZIP19に発現制御される3種類の分泌ペプチドの機能解析を実施する。分泌ペプチドのC末端側にGFPまたはFLAGを付加した融合タンパク質を野生型シロイヌナズナおよびbzip19変異体に導入した。またプロモータGUS形質転換体を作成した。これら形質転換体を用いて、3種類の分泌ペプチドが、bZIP19に発現制御されるかどうかを明らかにする。

次年度使用額が生じた理由

申請者が所属機関を異動したため、実験に遅れが生じた。

次年度使用額の使用計画

繰り越した金額を用いて実験を遂行するために必要な備品を購入すると共に、主にシロイヌナズナ形質転換体および蛍光顕微鏡観察やGUS染色等、植物体の観察に必要な実験に費用を充てる。

  • 研究成果

    (1件)

すべて 2015

すべて 雑誌論文 (1件) (うち査読あり 1件、 謝辞記載あり 1件)

  • [雑誌論文] Identification of putative target genes of bZIP19, a transcription factor essential for Arabidopsis adaptation to Zn deficiency in roots.2015

    • 著者名/発表者名
      Inaba S., Kurata R., Kobayashi M., Yamagishi Y., Mori I., Ogata Y. and Fukao Y.
    • 雑誌名

      Plant J.

      巻: 84 ページ: 323-334

    • DOI

      10.1111/tpj.12996.

    • 査読あり / 謝辞記載あり

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公開日: 2017-01-06  

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