研究課題
シロイヌナズナルビスコの生体内における酸化還元状態の解析方法を確立した。還元剤を含まないBufferでシロイヌナズナタンパク質を抽出し,非還元SDS-PAGEでタンパク質を分離後に抗ルビスコ抗体を用いてルビスコタンパク質を検出すると,移動度の違いから還元型と酸化型ルビスコをそれぞれ検出することが可能となった。また,酸化型ルビスコを非還元SDS-PAGEから抽出しマススペクトルを用いてジスルフィド結合部位を同定した。その結果,酸化型ルビスコでは大サブユニット間でのジスルフィド結合が検出された。このサブユニット間のジスルフィド結合の有無が上記非還元SDS-PAGE上での移動度の違いを生じていると示唆された。通常生育条件下で生育している野生型シロイヌナズナでは約20%のルビスコが酸化型であった。このことは通常生育条件下でも20%のルビスコは酸化失活していることを示しており,理論上は光合成カルビン回路活性を20%上昇させる余地があることを示唆している。また,酸化失活したルビスコのBSD2による還元活性化を調べた。大腸菌で発現・精製したBSD2タンパク質と酸化失活状態のルビスコをインキュベートするとルビスコ活性の有意な回復が観察された。この結果は,in vitroにおけるBSD2のルビスコの還元活性化能を示している。シロイヌナズナbsd2変異体における各種葉緑体遺伝子の発現と葉緑体タンパク質の蓄積解析を行い,bsd2の変異は主として葉緑体遺伝子の転写以降のタンパク質の翻訳・安定性に影響を与えていることが示された。
2: おおむね順調に進展している
交付申請書に研究期間内で明らかにする事として2項目をあげているが,どちらも達成できている。また,当初計画では平成28年度予定であったBSD2高発現シロイヌナズナの作出が本年度中に終了した。
計画通り研究が進展しており,当初予定通り研究を推進していく。具体的には以下の研究を行う。①BSD2高発現シロイヌナズナについて,PAM (pulse amplitude modulation)法による光合成効率活性②BSD2高発現シロイヌナズナについてガス交換測定による光合成活性測定
謝金等の発生する支払いが生じなかったため。
繰越分は物品費として使用予定。
すべて 2016 2015 その他
すべて 国際共同研究 (1件) 雑誌論文 (3件) (うち査読あり 3件) 学会発表 (5件) (うち国際学会 1件)
J. Ext. Bot.
巻: 67 ページ: 2519-2532
10.1093/jxb/erw071
Tetrahedron Letter
巻: 56 ページ: 6063-6065
10.1016/j.tetlet.2015.09.058
Biochem. Biophys. Res. Commun.
巻: 458 ページ: 536-542
10.1016/j.bbrc.2015.02.002