研究課題
BSD2/CYO2高発現シロイヌナズナを作成し,その表現型解析を行った。空ベクター導入株(コントロール株)に対して高発現株では,BSD2/CYO2遺伝子の転写量が約10倍であった。コントロール株と高発現株においてルビスコの含有量に違いは観察されなかったが,コントロール株のルビスコは約2割が酸化型であったが,高発現株では酸化型ルビスコはほとんど存在していなかった。酸化型ルビスコは活性を有しない事を前年までの研究で明らかにしており,高発現株ではコントロール株に対して活性型ルビスコの存在量が増加していることが示された。PAM (Pulse Amplitude Modulation) による光合成効率測定の結果,コントロール株と高発現株との間でFv/Fm(光化学系2の最大量子収率)に違いは観察されなかったが,Y(II)(光化学系2の実効量子収率)とqP (反応中心がopenである割合)ともに測定した光強度全てにおいて高発現株ではコントロール株よりも有意に高かった。LI-6400XTを用いて光合成による二酸化炭素固定化速度 (A-Ciカーブ)を測定した結果,高発現株はコントロール株に対して有意に二酸化炭素固定化速度が上昇していた。35日齢の植物体において,高発現株はコントロール株よりも全葉面積が有意に増加していた。また,35日齢の植物地上部の乾燥重量がコントロール株では平均140 mgであったのに対して高発現株では平均200 mgと約40%上昇していた。研究期間全体を通じて得られた結果より,当初の研究目的であった「BSD2/CYO2タンパク質は酸素酸化によって失活したルビスコを還元活性化する因子」である事を in vitroとin vivoで示すことができた。また,BSD2/CYO2高発現によって植物バイオマス増大が可能である事を示す事もできた。
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J. Plant Physiol.
巻: 207 ページ: 78-83
10.1016/j.jplph.2016.10.005