研究実績の概要 |
本研究の目的は,セレン酸,亜セレン酸,セレン含有アミノ酸(主として,セレノシステイン(実際にはプロテアーゼによりセレノシスチンとして検出される)及びセレノメチオニン)などの形態に注目し,土壌中でのセレンの形態変化と植物による吸収を明らかにすることである。 これまでセレンの形態別分析の方法として,HPLCで各種形態を分離後にICP-MSでセレンを検出する方法で行っていたが, 形態別のセレンの定量性の改善とセレノシステインの分離が不十分であることを中心に分析方法の再検討を行った。 セレンの定量性が悪い原因の一つは感度が低いことである。そこで,感度を向上させるためにICP-MSのリアクションガスの条件を変え,さらにHPLCの溶離液にメタノールを加えた。その結果,感度は向上しセレンの定量性にも改善が見られた。また,セレノシステインの分離は,HPLCの溶離条件を見直すことで改善ができた。 以上の改善をもとに,有機態セレンの土壌中での変化を解析したところ,土壌中のセレン含有アミノ酸としては主としてセレノメチオニンとして存在していることが明らかであった。また,植物に集積したセレンとしては,主としてセレノメチオニンでありセレノシステインはそれに比べて非常に低いことがわかった。 無機態セレンと合わせて解析すると,土壌では有機態セレンはセレン酸あるいは亜セレン酸に分解するものと,微生物を介した代謝によりセレノメチオニンとして残るものが存在し,土壌中で形態を動的に変化しているものと考えられる。
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