研究課題/領域番号 |
26450083
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研究機関 | 独立行政法人農業・食品産業技術総合研究機構 |
研究代表者 |
鈴木 克拓 独立行政法人農業・食品産業技術総合研究機構, 中央農業総合研究センター 水田利用研究領域, 主任研究員 (90354068)
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研究分担者 |
中島 泰弘 独立行政法人農業環境技術研究所, 物質循環研究領域, 主任研究員 (10354086)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 粘土質転換畑 / 硝酸態窒素 / 脱窒 / 溶存有機態窒素 / 懸濁態窒素 / 窒素・酸素安定同位体比 |
研究実績の概要 |
粘土質転換畑で,ダイズ栽培連作圃場と,イネ-ムギ-ダイズ2年3作体系圃場で麦のわら残渣をすき込んだダイズ期間において,暗きょ流出水および降雨時に鋤床上に停滞する水中の形態別窒素濃度の経時的変化を各降雨イベントで測定し,窒素流出特性および作付け体系の違いが流出に与える影響を調査した。いずれの圃場も窒素の形態は硝酸態が優勢であった。硝酸態窒素濃度は,ダイズ連作圃場の方が高かった。また,時期では,6月から梅雨明けの7月中旬まで高く,暗きょ流出水では測定したほぼすべての降雨イベントにおいて流出の進行につれて硝酸態窒素濃度が徐々に低下した。一方,降雨時の鋤床上の酸化還元電位は脱窒が起こるとされる範囲にあったが,鋤床上停滞水中の濃度は低下しない場合があった。このことから,圃場全体では硝酸イオンの脱窒が優勢であったものの,その発生には場所による不均一性があると推定される。 2年3作圃場でのムギ-ダイズ作付け期間における予備試験では,暗きょ流出水中溶存有機態窒素が硝酸態窒素の7割を占めたが,今回は,溶存有機態窒素濃度が最高で1 mg-N/Lで,硝酸態窒素濃度の10分の1程度である場合が多く,硝酸態窒素濃度との関係は判然としなかった。このことから,溶存有機態窒素の流出についても,作物や肥培管理等の発生条件がある可能性がある。 懸濁態窒素濃度については,ダイズ連作圃場と2年3作体系圃場のいずれにおいても最高で1mg-N/Lで,硝酸態窒素濃度の10分の1程度である場合が多かった。 これらから,今回のダイズ栽培期間の粘土質転換畑では,窒素の流出は硝酸態が優勢で,ダイズ連作圃場の方が濃度が高いこと,降雨イベントの時間スケールでの脱窒が生じるが,場所による不均一性があると推定されること,溶存有機態および懸濁態での流出が生じるものの,その窒素流出への寄与は限定的であることが明らかになった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
ダイズ連作圃場と2年3作体系圃場における試料水の採取,形態別窒素濃度の測定等は,おおむね計画通りに進行した。しかし,硝酸イオンの窒素・酸素安定同位体比の測定に着手できなかったため,試料水中の硝酸イオン濃度変化の要因について,直接考察することができなかった。そのため,計画に対して少し遅れているとした。
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今後の研究の推進方策 |
26年度の結果から,暗きょ流出水では,降雨イベントスケールで脱窒と思われる硝酸イオンの濃度低下が生じた一方で,鋤床上停滞水の結果から,圃場内での脱窒の発生が場所的に不均一であると推定されたことから,ダイズ期間の硝酸イオン濃度が高い時期に,より面積が小さい圃場において複数箇所で鋤床上停滞水を採取し,硝酸イオンの窒素・酸素安定同位体比の手法を用いて,圃場内での脱窒の不均一性を検討する。また,引き続き大面積圃場での測定を継続し,窒素流出特性の長期的変動を調査する。さらに別の圃場で窒素施用量が多い冬作オオムギについても調査を行い,作物の違いが窒素流出特性に与える影響を明らかにする予定である。 土壌窒素肥沃度との関連で,作土中窒素含量を測定する。圃場内における脱窒の不均一性が示唆されたことから,土壌の培養試験については,27年度の結果から,その実施を判断する。なお,26年度に採取した水試料は保存しており,27年度に硝酸イオンの窒素・酸素安定同位体比の測定を行う計画である
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次年度使用額が生じた理由 |
備品として計上した電磁流量計が定価に比べて低価格で調達でき,研究費を効率的に使用できた。加えて,窒素・酸素安定同位体比の測定に着手できなかったこと,圃場の運用の都合による資材費の変更等により残額が生じた。
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次年度使用額の使用計画 |
次年度使用額1,107,529円は,硝酸イオンの窒素・酸素安定同位体比の測定に着手すること,冬作オオムギで使用する資材を調達すること,26年度はなかった冬作の前に分担者との打ち合わせのための出張を行うこと,水位計等の追加・保守等に使用することを計画しており,次年度の研究計画遂行のために,効率的に使用する。
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