研究課題/領域番号 |
26450084
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研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
新谷 尚弘 東北大学, (連合)農学研究科(研究院), 准教授 (70374973)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 膜輸送体 / 出芽酵母 / グルコース不活性化 / グルコース抑制 |
研究実績の概要 |
出芽酵母モノカルボン酸輸送体Jen1はグルコース枯渇時に発現し、原形質膜に輸送される。グルコースが再添加されると、その遺伝子発現は抑制され(グルコース抑制)、Jen1タンパク質も分解される(グルコース不活性化)。私たちは、グルコース添加後にJen1の消失が遅延する変異株(約50株)を遺伝子破壊株ライブラリーから取得していた。乳酸培地での培養液にグルコースを添加すると、Jen1タンパク質は速やかに消失するが、これらの変異株ではこの消失が遅延する。翻訳阻害剤をグルコースと同時に添加し、消失のキネティクスを解析することにより、これらの変異株が、グルコース抑制とグルコース不活性化のどちらに異常があるか解析した。その結果、15の遺伝子がグルコース抑制に、19の遺伝子がグルコース不活性化に関与することが明らかとなった。後者の遺伝子破壊株において、その多くで液胞の酸性化が正常に起こっておらず、Jen1の分解が阻害されたと考えられた。 Jen1のグルコース誘導性のエンドサイトーシスに必要なRsp5アダプターであるArt4とJen1の相互作用について解析した。Jen1は12回膜貫通ドメインとそれぞれ約140および60アミノ酸からなるN末端領域とC末端領域を細胞質側に持つことが予測されている。それぞれの領域の部分欠失変異や点変異を導入したJen1変異体を作製し、それらのエンドサイトーシスのキネティクスやArt4との相互作用を解析した。その結果、Jen1のC末端に近い領域がJen1-Art4の相互作用に最も重要であることが分かった。この他にも、N末端領域にJen1のエンドサイトーシスに重要な領域があることが示されたが、この領域はArt4以外のアダプタータンパク質にも認識されることが示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
グルコースによって誘導されるJen1の消失に関与する遺伝子の役割を分類でき、大きな進展が得られたが、これらの遺伝子がグルコースによる制御に特異的かどうかを明らかに必要がある。その他は計画通りに進んでいる。
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今後の研究の推進方策 |
タンパク質の総量はその合成と分解のバランスによって決まる。グルコース誘導的なJen1の消失は、(1)その遺伝子発現の抑制と(2)Jen1タンパク質の分解の促進が協調的に起こることで制御される。当該年度は、Jen1の消失に関わる遺伝子の機能を(1)と(2)に分類した。(1)について精密な解析を行うために、JEN1遺伝子プロモータにレポータ遺伝子LacZを融合したDNAコンストラクトを作製し、JEN1遺伝子発現における各遺伝子の役割・機能を解析する。(2)のJen1タンパク質の分解が阻害された変異株のうち、多くは液胞pHが上昇していることが示された。これらの株で、液胞内にJen1が分解されずに蓄積しているか解析する。また、グルコースにより制御を受けない他の膜タンパク質の分解がこれらの株で阻害されるか解析し、グルコース不活性化に特異的な現象であるか検証する。 Art4とJen1の相互作用について、引き続き解析していく。グルコ-ス不活性化をうけるMal61やHxt6にも解析を拡げ、グルコース不活性化機構の一般化をめざす。
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次年度使用額が生じた理由 |
当初、「その他」経費は0円として計上していたが、電子顕微鏡観察の受託解析費用約20万円をその他経費として使用した。これと物品費約106万円と合わせた約126万円になるが、当初予定していた145万円を下回った。これは、 また、学会での成果発表のため、大学院生の旅費を計上していたが、他の経費賄えたため、15万円を予定していた旅費は約7万円に留まった。
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次年度使用額の使用計画 |
繰り越した物品費(約19万円)、旅費(約8万円)はそれぞれ研究に必要な試薬や消耗品の購入費、学会での成果発表旅費として使用する予定である。
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