研究実績の概要 |
1) 芳香族化合物トランスポーター遺伝子の破壊株作製。B. multivorans ATCC17616株のゲノム上で、安息香酸トランスポーターとして報告があるBenK (Acinetobacter baylyi ADP1株)と相同性が高い、Major Facilitator Superfamilyタイプの3つのトランスポーター様遺伝子benK2, benK3, benK4について、既に作製している単独の遺伝子破壊株に加えて、これらの遺伝子の二重遺伝子破壊株及び三重遺伝子破壊株を作製した。 2) トランスポーター遺伝子破壊株の生育の解析。作製した遺伝子破壊株について、安息香酸、3-クロロ安息香酸各液体培地での生育を解析したところ、各二重遺伝子破壊株では野生株との生育速度の差はほとんど無かった。3-クロロ安息香酸液体培養において、三重遺伝子破壊株では、野生株よりもわずかに生育速度が遅い傾向が見られたが、顕著な差は無かった。これらの結果から、上記3つのトランスポーターに加えて、さらに他のトランスポーターが安息香酸や3-クロロ安息香酸の取り込みに関与している可能性が考えられた。 3) トランスポーター遺伝子の発現解析。野生株について、クエン酸(対照区)、安息香酸、3-クロロ安息香酸をそれぞれ基質として液体培養を行い、benK2, benK3, benK4遺伝子群の発現をReverse-Transcription PCR(半定量)により解析した。その結果、benK2、benK4の2遺伝子は安息香酸での培養の対数増殖期中期、及び、3-クロロ安息香酸での培養の同中期と後期に発現が見られ、これらの基質で誘導発現されることが示唆された。一方、benK3遺伝子は、クエン酸培養区も含めて3種の培養液ともに発現が見られ、構成的に発現することが示唆された。
|