研究実績の概要 |
B. multivorans ATCC17616株の3-ヒドロキシ安息香酸の取り込みを行うMFS familyのトランスポーター遺伝子であるmhbK遺伝子は、同化合物の分解経路を構成する4つの遺伝子群gtdA-orf1-maiA-nahGとともに、クラスター構造を形成している。その上流域には、165bpのintergenic regionを介して、LysRタイプ転写調節因子(LTTR)の遺伝子mhbRが、分解遺伝子群クラスターと逆向きに存在する。このmhbR遺伝子にHis-tagを付加して大腸菌発現系を構築、MhbRを発現、精製して、上記の165bpの領域との相互作用を調べたところ、MhbRがこの領域に特異的に結合することが判明した。このことから、MhbKの発現がMhbRにより制御されることが強く示唆された。一方、興味深いことに、この165bpの領域には、LTTRにより制御されるプロモーターの典型的なモチーフであるT-N11-A(NはDNA)を含む4bp程度以上のinverted repeat配列が見られず、MhbRによるプロモーター領域の認識機構が、他のLTTRとは異なることが示唆された。 また、RNA-seqに向けて、サリチル酸、4-ヒドロキシ安息香酸等を基質とする各液体培地での生育曲線を調べて培養条件を決定した。 一方、安息香酸、3-クロロ安息香酸のトランスポーターであると予想された、benK2, benK3, benK4の各遺伝子について、単独遺伝子破壊株、3通りの組み合わせの二重遺伝子破壊株、三重遺伝子破壊株を構築して、安息香酸、3-クロロ安息香酸での生育を調べたが、野生株との顕著な差は見られなかった。このことからは、これらのトランスポーター遺伝子を破壊した場合に、さらに他のトランスポーター遺伝子がその機能を補完している可能性が考えられた。
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