研究実績の概要 |
今年度は、硫黄分子センシング機構(1)サルファーインデックスの構築と育種戦略への活用を目的に取り組んだ。細胞内の含硫黄化合物は細胞内含量が低く、炭素や窒素代謝産物のようなメタボロミクス的な理解は遅れていた。しかし、最近、応募者は各硫黄分子のチオール基をBromobimane試薬で修飾し、LC-MS/MSで分離・選択的検出・定量可能な新たな方法を確立し、その成果を報告した( Journal of Bioscience and Bioengineering, 119, 310-313, 2015; PLoS one, doi: 10.1371/journal.pone.0120619, 2015)。この方法では、低分子の硫黄化合物を修飾試薬により検出しやすい高分子へと変換し、さらにLC-MS/MSのMRM解析による高選択性かつ高感度な検出系を組み合わせることで、硫黄分子種の網羅的な検出を世界に先駆けて可能にした。測定サンプルの作製も簡便であり、細胞を有機溶媒処理して低分子化合物を抽出するのみである。検出に関しては、システインやグルタチオンの他にも、チオ硫酸イオンや亜硫酸イオン、硫化物イオンなどの硫黄同化経路の主要な中間体が、網羅的に(現在、計9種)、数百ナノからマイクロモルレベルで、一度に定量可能であり、スループット性も高い(20分/ラン)。このシステムを用いることで、各種微生物のサルファーインデックスを構築し、システイン高生産への育種戦略に活用することに成功した(Journal of Bioscience and Bioengineering, 119, 176-179, 2015)。
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