研究課題/領域番号 |
26450093
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研究機関 | 広島大学 |
研究代表者 |
村上 千穂 広島大学, サステナブル・ディベロップメント実践研究センター, 研究員 (50649077)
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研究分担者 |
青井 議輝 広島大学, サステナブル・ディベロップメント実践研究センター, 特任講師 (40386636)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 難培養性微生物 / 亜硝酸酸化細菌 |
研究実績の概要 |
現在知られている亜硝酸酸化細菌4属のうち、門レベルで難培養性を示すNitrospiraは、これまで2種のみ分離培養に成功していた。このたび、新規な手法によって新たに分離培養されたNitrospiraは、長い間その存在を知られ、環境中でも排水処理でも重要とされてきたにも関わらず、長らく純菌培養が難しいとされてきた。これまで、難培養性とされてきた理由と原因を再度、検証することによって新たな知見を得ることができれば、さらなる新規培養手法の開発やその増殖制御による排水処理への応用が可能と考えた。 新規の分離培養手法のコンセプトは、マイクロコロニー単位で分離・培養することで、他の微生物を除去することと増殖初期の局所的菌体密度を上げることを同時に実現させた。その結果、いったん分離培養に成功すれば従来からの回分培養でも純菌培養できることが判明した。ところが、環境に近い培養条件である集積連続培養系と純菌培養系での亜硝酸酸化活性とを比較すると明らかに集積連続培養系で得られた菌体の方が活性が高いことが分かってきた。そこで、純菌培養系のNitrospiraと集積連続培養系でNitrospiraと共存している従属栄養細菌を分離培養して共培養させることによって、Nitrospiraの亜硝酸酸化活性に影響を与えている従属栄養細菌を特定してその原因を調べることにした。 集積培養または、活性汚泥中のNitrospiraと共存する微生物を、純菌の培養上清をもちいてスクリーニングし、現在35株ほどの従属栄養細菌の獲得に成功した。これらのうち、数株が良好な亜硝酸酸化活性を示している。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度の実施計画は、共存する従属栄養細菌のうち、亜硝酸酸化活性に影響する菌のスクリーニングと同定を行うことであった。現在、35株以上のスクリーニングが順調に進んでいて、13種の種の同定も進んでいる。そのうち、3種が亜硝酸酸化活性に良好な影響を与えている。他の株についても活性試験、同定を行っているところである。難培養性微生物とその共存微生物も増殖が遅いため、今後も継続的に菌株数を増やしていく予定である。
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今後の研究の推進方策 |
今年度は、当初の予定では、増殖特性を変化させる物質の同定を行う予定であったが、物質同定を行う際に、Nitrospiraの増殖が遅いことが非常に研究を遂行する上で問題であることがわかってきた。そこで、より早期にNitrospiraの増殖を検出できるバイオアッセイ系を確立することを予定にいれている。この方法に関しては、予備実験として、良好な結果が得られており、研究が加速することが見込まれる。また、正確な菌体密度を測定するために、リアルタイムPCRや定量FISHを行う予定である。さらに、前年度からの続きの従属栄養細菌のさらなる獲得・同定も同時に行っていく。これらを前半に行い、物質同定に関しても準備をしながら、遅くとも後半には取り掛かる予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
当初、1年目に必要と考えていた共存微生物の同定を継続的に行うことにしたので、その費用を残した。また、夏に海外発表する予定であったが、より興味深い結果が得られたので、論文にまとめる段階まで発表を控えることにした。
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次年度使用額の使用計画 |
繰り越した金額は、継続的な微生物の同定のためのシークエンス費用に充てる予定である。
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