研究実績の概要 |
研究代表者による分子内ケトンをもつ新規な酸化糖の酢酸菌による酸化発酵の研究は、2010年に学振の特定国派遣研究者計画に採択され、アルゼンチンへ派遣された機会にGluconacetobacter liquefaciens RCTMR株を単離したのが端緒となった。それまでは古典的な2-ケトグルコン酸、5-ケトグルコン酸、2,5-ジケトグルコン酸、L-ソルボースなどが酢酸菌の酸化発酵生産物の例であった。また、過去50年にわたって2,5-ジケトグルコン酸がグルコース酸化系の最終産物とする認識が定着していて、2,5-ジケトグルコン酸以降の代謝系に関する研究や報告は見られていなかった。以来、4-ケトアラボン酸、2-デオキ-4-ケトリボン酸や、4-ケトリボン酸などが誰も知らなかった酸化発酵産物であることを報告した。その基盤の全貌を明らかにするために、本研究では5-ケトフルクトースや5-ケトプシコースなどを実証した。また、地球規模な産業廃棄物となったグリセリンから、ヒドロキシピルビン酸やヒドロキシマロン酸など新規な素材分野に分子内ケトンをもつ酸化糖が製造できるなど多大な成果が得られた。 近年、パームオイルなど植物油を原料にした石油代替燃料のバイオディーゼルの製造が盛んになってきた結果、副産物の廃グリセリンが新たに地球規模で未利用産業廃棄物となってきた。そこで酢酸菌によるグリセリン酸化系のうち、分子内ケトンをもつヒドロキシピルビン酸の酸化発酵の確立を緊急課題として検討した。今回の実験から、二つのグリセリン酸化系は以下のように推定された。酸化系1:グリセリン - ジヒドロキシアセトン - ヒドロキシピルビンアルデヒド - ヒドロキシピルビン酸: 酸化系2:グリセリン - グリセリン酸 - ヒドロキシマロンアルデヒド酸 - ヒドロキシマロン酸
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