研究課題
酢酸菌はソルビトールからのソルボース発酵などのように,そのユニークな酸化的物質変換能が利用され,また研究も行われてきた。一方,酢酸菌は細胞内物質代謝もユニークなところがあるが,その点はほとんど顧みられることがなかった。本研究では,酢酸菌の細胞内代謝に着目し,逆転の発想ともいえる「酢酸菌による還元的物質生産」を行おうとするものである。Gluconobacter属酢酸菌は,TCAサイクルと解糖系(EMP)が不完全で,糖代謝のほとんどをペントースリン酸経路に依存する。不完全なTCAサイクルのため,アセチルCoAへの代謝量が乏しく,最終代謝産物は二酸化炭素と酢酸となる。また,細胞膜のNADH酸化系呼吸鎖の活性は強いが,NADPH酸化活性はNADH酸化のそれの1-2%程度である。このことは,細胞内のNADPHレベルが高いことを期待させるが,実際には,NAD(H)の方がNADP(H)よりも多く,両者とも酸化型としての存在比が高い。前年度までに,G. oxydans NBRC3293株の細胞表層型グルコース脱水素酵素(mGDH)の遺伝子破壊株を作製し,その解析を行ってきた。平成28年度は,野生株と変異株を用いてキナ酸からのシキミ酸生産試験を行った。この経路において律速になっているデヒドロキナ酸脱水酵素(DQD)とNADP+依存型シキミ酸脱水素酵素(SKDH)を同時に高発現する株の構築を試みた。構築した菌株を用いてシキミ酸生産を検討したが,シキミ酸はほとんど検出できなかった。酵素活性を確認したところ,DQDのみの高発現にとどまり,DQDとSKDHの同時高発現ができていなかった。DQD及びSKDHの単独での高発現はできているため,同時に高発現させることが困難であると示唆された。今後,この問題を克服し,mGDHの有無によるシキミ酸生産性の比較を行う。
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