研究実績の概要 |
福井県内の土壌から分離されたPaenibacillus属の新種細菌であるFPU-37株は、カビなどの真菌類に対して強い抗菌活性を有している。真菌類の細胞壁は、不溶性の高分子多糖であるキチンやβ-1,3-グルカンを主成分として構成されていることから、両糖に対するFPU-37株の分解活性を調べたところ、キチン分解活性は検出されなかったが、高いβ-1,3-グルカン分解活性を確認した。 不溶性カードランを用いてFPU-37株が培養液中に分泌したβ-1,3-グルカナーゼのアフィニティー精製を行い、そのN末端アミノ酸配列からβ-1,3-グルカナーゼ遺伝子を同定した。本遺伝子は、3,003塩基対からなるORFで、1,001アミノ酸残基、推定のシグナルペプチドが51アミノ酸残基から構成されており、シグナルペプチドが切断された分泌型成熟酵素の分子量は103 kDaと算出され、アフィニティー精製した酵素のSDS-PAGE結果と一致した。さらに、InterProScanによるモチーフ・ドメイン検索を行った結果、本酵素は糖質分解酵素ファミリー81に分類される典型的なグルカナーゼであった。大腸菌による大量発現では、コールドショック発現系により封入体を回避して活性型酵素として発現させることに成功した。本酵素活性の至適条件は、pH8.0および40℃であった。また、β-1,3-グルカンのオリゴ糖は、高等植物の基礎的抵抗性を誘導することが知られていることから、β-1,3-グルカンを主成分とする酵母細胞壁を本酵素により部分分解して植物体に与えたところ、病害防御応答関連遺伝子として知られている植物由来グルカナーゼの大きな発現上昇が確認された。
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