研究課題/領域番号 |
26450100
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研究機関 | 大阪府立大学 |
研究代表者 |
炭谷 順一 大阪府立大学, 生命環境科学研究科(系), 准教授 (10264813)
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研究分担者 |
西村 重徳 大阪府立大学, 生命環境科学研究科(系), 助教 (90244665)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | アミラーゼ / マルトトリオース生成アミラーゼ / 糖転移反応 / 配糖体 / マルトトリオース |
研究実績の概要 |
本酵素の加水分解活性と糖転移反応における,温度,pH,有機溶媒の影響について検討した。その結果,温度については55℃まで加水分解活性および糖転移反応ともに上昇したが,加水分解活性の上昇率よりも糖転移活性の上昇率の方が高くなることがわかった。pHについては加水分解活性の至適pHが5.5~6.5であるのに対して,糖転移反応の至適pHは8であることが明らかとなった。このpH依存性の違いが糖転移反応の機構を探る大きな鍵になると考え,pH変化に伴う立体構造の変化を測定する必要性が生じた。有機溶媒については,40%アセトンおよび20%エタノール添加でも糖転移活性が増大することがわかった。 次に前年度作製した糖転移活性が大きく上昇したL191R変異酵素について,X線結晶構造解析を行った。Spring-8 BL26B2にて回折強度データを収集し,分解能はアポ型で1.78Å,G3複合体で1.81Åまでのデータを用い,WTの構造を用いた分子置換法によって構造モデルを構築した。解析によって決定した構造をWTと比較したところ,RMSDはすべて0.1Å以下であり、変異による全体構造の変化はないことを確認した。活性部位に焦点を当てたところ,置換したR191残基の側鎖のみが変化しており,アポ型ではR191側鎖がサブサイト+1の方向に伸びていることがわかった。一方G3複合体では,側鎖の電子密度が低く配置が固定されていないことが示唆されたが,G3の方を向いていることが示唆された。L191Rアポ型のR191側鎖は糖転移反応の糖受容体として認識されるグリセロールと2.4Åの距離にあり,水素結合を形成できる距離に位置することがわかった。以上のことから,L191R変異体はR191側鎖が糖受容体と水素結合が可能となり糖受容体が還元末端に接近するのを補助している,または適した場所に保持している可能性が考えられた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究計画で平成26年度に予定していた(1)G3Amyの詳細な酵素化学的性質の解明,(2)G3AmyにおけるCBM欠損酵素の作製と基質並びに生成物特異性の解析,(3)G3Amy単独及び基質複合体の高解像度X線結晶解析については終了している。 また平成27年度以降に予定していた(5)G3AmyのG3特異性に関与するアミノ酸の同定,(6)G3Amyの糖転移活性に関わるアミノ酸の同定と糖転移活性が増大した変異酵素の取得においても,立体構造解析で得られた結果を基に糖転移反応が増大した数種類の変異酵素を獲得している。獲得した変異酵素を用い,グリセロール,カフェ酸,フェルラ酸,アスコルビン酸などのアグリコンに対して配糖化を試み,それぞれのアグリコンに対して反応性の高い変異酵素を選択している。 今年度はG3Amyの加水分解活性と糖転移活性に対する温度やpH,有機溶媒の効果を検討することで,(9)目的のG3配糖体合成条件の最適化と大量合成に関する知見を得るとともに,pH依存性の差異から根本的な糖転移反応の機構に迫る大きな鍵を発見することができた。pH変化に伴う構造変化を明らかにすることで,糖転移反応機構を明らかにできると考えている。また,糖転移活性が大幅に上昇したL191R変異酵素の立体構造を解析したことによって,(8)特異な生理活性を有する配糖体合成酵素の創製への知見を得ることができた。 このように予定していた実験項目をほぼ予定通りに進行することができていると考えている。
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今後の研究の推進方策 |
G3Amyの詳細な性質と立体構造解析に留まらず,変異酵素の解析によってG3Amyの特性であるG3特異性や糖転移反応に関与するアミノ酸残基を同定することができた。その結果,糖転移活性を上昇させることが可能となり,それら変異酵素を用いて数種のアグリコンに対して配糖体を合成することも達成している。しかし高効率なG3配糖体化酵素を創製するためには,①各種変異酵素を用いた糖転移反応と加水分解反応の定量的解析,②今回明らかにした糖転移反応のpH依存性の解析,③合成した配糖体の単離精製と構造解析,④カルボキシ基への配糖化の確認とその最適化,⑤さらなる配糖化効率の上昇,の5つの課題が残されている。 これまでの研究では各種変異酵素の中から最も糖転移産物が多い酵素をスクリーニングするために大まかな解析を行うに留まっており,高効率配糖体合成酵素を創製するためには反応の最適化と定量的解析が不可欠となる。また,pH変化に伴う構造の変化をX線結晶解析で明らかにしていくことで,糖転移反応機構を明らかにしていきたいと考えている。 また,フェルラ酸配糖体合成の過程で,生成した配糖体が複数種あることが判明した。フェルラ酸は水酸基が1つしかないため,生成する配糖体は1種類であるはずであった。解析から付加したG3の過分解の可能性は否定されたため,配糖化部位がカルボキシ基にも及んでいる可能性が強く示唆された。カルボキシ基に糖転移することが可能となれば,配糖化できる化合物の種類がさらに増えることになり,本酵素の有用性がさらに高まる。水酸基を含まずカルボキシ基を有する化合物の配糖体合成を試みたり,合成された配糖体の構造を解析したりすることで,これらの点について明らかにしていきたいと考えている。
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次年度使用額が生じた理由 |
差額が生じた理由は物品費をほとんど使わなかったことによる。これは既に保持している試薬等で今年度の実験が賄えたこと,合成した配糖体を解析するために使用していた高速液体クロマトグラフィー装置が故障のため,本装置を用いた実験ができなかったことによる。
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次年度使用額の使用計画 |
今年度,合成した配糖体を解析するために使用していた高速液体クロマトグラフィー装置が故障により使用不能となってしまった。次年度は作製した多数の変異酵素を用いた定量的解析を行う必要があるので,可能であれば高速液体クロマトグラフィー装置を新たに購入したいと考えている。
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