研究実績の概要 |
今回新たに得られた3つの構造(L191R,L191R-G3複合体,L191R/D225A-G4複合体)と以前に構造を取得したWT, WT-G3複合体とのRMSDをそれぞれ算出した結果,すべて0.12 Å以下であり全体構造に大きな変化は見られなかった。 活性部位について見てみると,WTとWT-G3複合体では違いは確認されなかった。またWT-G3複合体におけるL191は生成物であるG3と3.9 Åの距離であった。L191RとG3複合体を比較したところ,L191RではR191側鎖はsubsite +1方向をむいておりWTでは不可能であった糖受容体と相互作用できる距離に位置していた。一方でG3複合体では,R191側鎖はsubsite -2方向を向いておりR191側鎖は生成物G3と3.7-3.8 Åの距離に存在し,水素結合または分子間相互作用を形成していると考えられた。 以上のことからL191RはLeuがArgに置換されたことで糖受容体と相互作用が可能になり糖受容体をsubsiteへの導入を補助することで糖転移活性が上昇したことが示唆された。また生成物G3との複合体から,反応後は生成物と相互作用する可能性も考えられた。 L191R/D225A-G4複合体の構造の取得を試みたところ,活性部位で確認されたのは生成物G3と添加していたG4であった。確認されたG3はG4が加水分解されて生じたものであると考えられる。得られたL191R/D225A-G3+G4複合体は酵素-基質複合体に糖受容体が導入された状態であると考えられる。 R191はsubsite +1付近で確認されたG4のG1分子と3.6Å,3.9 Åの距離に存在していた。L191R-G3複合体のR191側鎖と比較するとグアニジノ基の向きがわずかに異なっていたことから,subsite +1付近のG1分子と相互作用していると考えられた。
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