研究課題/領域番号 |
26450101
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研究機関 | 立教大学 |
研究代表者 |
赤沼 元気 立教大学, 理学部, 助教 (30580063)
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研究分担者 |
石塚 盛雄 中央大学, 理工学部, 教授 (50168241)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | Lipase / EliA / PHB / Ralstonia |
研究実績の概要 |
前年度までに、遺伝子破壊することでリパーゼ遺伝子(lipA)の転写誘導効率が低下する転写因子候補(LipR80-4)を見出していた。今年度は精製LipR80-4を用いた解析を行い、lipA転写調節領域にLipR80-4が直接結合することを見出した。さらに、DNaseI footprint解析などにより、LipR80-4の結合配列がlipA転写開始点上流 -73 ~ -47の領域であることを同定した。lipR80-4上流には二成分制御系センサーキナーゼをコードすると考えられる遺伝子lipQ80-4が存在するため、LipR80-4がリン酸化を受けることで活性化することが予想された。lipQ80-4の欠損株ではlipAの転写誘導効率低下が観察されたため、LipR80-4のリン酸化部位をアミノ酸置換解析によって同定した。その結果、59番目のAsp残基リン酸化がlipAの転写誘導に重要であることが判明した。一方前年度までに、eliA転写調節領域のDNAを固定したアフィニティーカラムを用いた解析から、eliAの転写因子候補を見出していた。そこでこの遺伝子破壊株を作製し、eliAの転写量が低下すること、及びEliA発現量低下に伴うリパーゼ発現効率の低下を確認した。 また、前年度までの分泌タンパク質のプロテオーム解析などから、リパーゼ以外にもHcpやNdkなど感染に関与する分泌タンパク質の発現がステアリルアルコールによって転写レベルで誘導されていることを見出していたが、遺伝子相補実験などにより、これらの遺伝子誘導にもEliAが必要であることを示した。これらの成果をMicrobiologyにて報告した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
申請書で挙げた検討課題のうち今年度は以下の3点について主に検証し、それぞれの項目において、研究計画通り、あるいはそれを上回る進展が認められた。1.lipAの転写制御解析; 申請書ではステアリルアルコールによるリパーゼ発現誘導に関わるlipA転写因子の探索と候補遺伝子の遺伝子破壊による影響観察までを計画していたが、今年度の解析によりLipR80-4がlipA転写調節領域に直接作用すること、ならびにLipR80-4の結合領域の同定に成功した。さらに、LipR80-4がリン酸化を受けることで活性化すると考えられるアミノ酸残基も決定した。2.eliAの転写制御解析; 計画ではeliA転写調節領域を用いたDNAアフィニティーカラムによって転写因子候補を同定し、遺伝子破壊によりその影響を検証することを予定していた。今年度の解析により、eliA転写調節領域に作用すると考えられる転写因子の遺伝子破壊株においてeliAの転写誘導効率が低下することを見出している。3.分泌、膜、細胞質タンパク質のプロテオーム解析; 前年度までにステアリルアルコール添加によって発現量が増加するタンパク質を各フラクションで複数個同定することに成功していたが、これらの発現誘導にEliAが必須であることを証明した。
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今後の研究の推進方策 |
eliAの転写促進因子と考えられるタンパク質を精製し、EMSAによって直接的な相互作用が認められるかを検証する。eliAの転写調節領域への結合が確認された場合、結合する領域を決定する。一方、比較プロテオーム解析の結果からステアリルアルコール添加によって顕著に発現量が増加したタンパク質のうち、アルコールの資化に関わる細胞質タンパク質の遺伝子破壊株作製に最近成功した。今後、この遺伝子破壊がステアリルアルコールによるリパーゼの発現誘導やPHB生産に与える影響を観察する予定である。その一方で、リパーゼの比活性を向上させている因子の探索にも取り組む。リパーゼの精製、及びlipA遺伝子破壊株の作製には成功しているので、lipA破壊株の培養上清に精製リパーゼの活性を向上させる因子が含まれているか検証する。これらの計画に加え、EliAの高発現がステアリルアルコールによるリパーゼ発現誘導効率に与える影響に関しても検証する予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
次年度使用額が発生した理由として、試薬・酵素類の購入額が少なかったことが挙げられる。
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次年度使用額の使用計画 |
最終年度にあたる次年度に使用する試薬・酵素類などの消耗品購入に充てる予定である。
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