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2014 年度 実施状況報告書

嫌気性アンモニア酸化(anammox)は温暖化ガス亜酸化窒素を生成するか

研究課題

研究課題/領域番号 26450105
研究機関崇城大学

研究代表者

藤井 隆夫  崇城大学, 生物生命学部, 教授 (80165331)

研究分担者 西山 孝  崇城大学, 生物生命学部, 准教授 (00425331)
平 大輔  崇城大学, 生物生命学部, 准教授 (00569890)
研究期間 (年度) 2014-04-01 – 2017-03-31
キーワード嫌気性アンモニア酸化 / anammox / ヘムタンパク質 / ヒドラジン合成 / 脱窒 / NaxLS / ヒドラジン合成酵素
研究実績の概要

嫌気性アンモニア酸化(anammox)が実際に温暖化ガスN2Oを生成しない生化学反応であると明らかにするため、反応機構で仮定されているNH3とNOから反応中間体ヒドラジン(N2H4) 生成反応に伴う、N2Oの副生があるか調べた。具体的には1)複合酵素 HZS-NaxLS (ヒドラジン合成酵素(HZS)と電子伝達タンパク質であるNaxLSからなる) が触媒するN2H4合成の際にN2Oが生成するか 2)野生型NaxLSあるいは変異型NaxLSを使った場合、HZS-NaxLS の触媒するN2H4合成と副生するN2Oに差が出るか調べる。さらに、3)HZSとNaxLSの複合酵素結晶を作成し、X 線構造解析からHZS 構造情報、NaxLSとHZSの相互作用機作を考察し、N2O生成の有無に結びつく情報を得る。
実験の結果、HZS-野生型NaxLSでは、基質のNOの濃度に依存して、N2O生成が増加した。これは、NOと還元剤ジチオナイトとの反応がほとんどで、一部、HZS-NaxLS の触媒反応に伴うものも含まれているように思われた。一方、NO発生試薬(NOC7、同仁化学)を使うと、NOと還元剤ジチオナイトによるN2O生成がかなり抑えられた。また、酵素によるヒドラジン合成に伴うN2O生成は、野生型NaxLSを使った場合ほとんど起こらないことが分かった。
NaxLSはヘテロ2量体ヘムタンパク質でそれぞれのサブユニットに1個のヘムを持つ。いずれも非常に特殊なHis/Cysを配位子とし、そのため酸化還元電位が非常に高い。両サブユニットのCysをMetに変えた変異型NaxLSを用い、NO発生試薬のNOC7を使い実験した。その結果、ヒドラジン合成量は野生型の半分以下に低下し、N2O生成量が増加することが分かった。
以上の結果から、N2O生成とNaxLSの配位環境が密接に関わっていると思われた。現在、これらデータの再現性の確認、およびHZS-NaxLSの複合酵素単結晶のX線結晶解析により、酵素の構造からのデータを取得する予定である。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

当初に計画し、申請書に記載した平成27年度の研究計画・方法の5項目を年度内に総て行った。その結果、anammoxでN2O生成の可能性のある素反応のヒドラジン合成について、野生型NaxLSを使った場合に、酵素反応に伴うN2O生成がほとんど起こらないことが分かった。ヒドラジン合成で、さらに、N2O生成が起こらない理論的根拠を明らかにするため、ヒドラジン合成酵素(HZS)の立体構造情報(研究計画・方法の5番目の項目)が必要であるが、HZSの良質な結晶作成が難しかった。しかし、ヒドラジン合成にNaxLSの反応系への添加が必要なことを研究代表者の研究室で明らかにしているが、HZS-NaxLSの複合酵素の結晶作成を試み、この単結晶を得ることができた。この結晶からHZSの構造情報のみならず、HZSとNaxLSの相互作用を明らかにできる可能性が出て来た。以上から判断し、研究は当初の予定に対して概ね順調と判断できる。

今後の研究の推進方策

前年度に引き続き、データの再現性を確認すると伴に、1)HZS-NaxLS複合体結晶のX線構造解析を進め、ヒドラジン合成で、N2O生成が起こらない実験的条件および理論的根拠を明らかにする。 2)NO発生試薬によるNOの低濃度連続供給によるN2O生成の条件の検討する。 3)当初計画していたようにヒドラジン合成に必要とする電子供与体にできれば生理的電子供与体を使った実験を行い、NOを低濃度にコントロールした状態で、N2O生成がないことの確証を得る。4)上記とは別の反応、ヒドロキシルアミン酸化還元酵素の触媒するNOとヒドロキシルアミンの相互変換、におけるN2O生成有無を調べる。

次年度使用額が生じた理由

高速液体クロマトグラム用のガードカラムを年度末に購入したが、業者の見積もり価格と納入価に217円の差があり、217円が残額として残った。

次年度使用額の使用計画

残金の217円は平成27年度の物品費に加えて使用する予定である。

  • 研究成果

    (9件)

すべて 2015 2014

すべて 雑誌論文 (1件) (うち査読あり 1件、 謝辞記載あり 1件) 学会発表 (8件) (うち招待講演 1件)

  • [雑誌論文] Reduction of nitric oxide catalyzed by hydroxylamine oxidoreductase from an anammox bacterium2014

    • 著者名/発表者名
      Tatsuya Irisa, Daisuke Hira, Kenji Furukawa, Takao Fujii
    • 雑誌名

      Journal of Bioscience and Bioengineering

      巻: 118 ページ: 616-621

    • DOI

      10.1016/j.jbiosc.2014.05.018

    • 査読あり / 謝辞記載あり
  • [学会発表] 化学修飾されたチロシンが配位したヘムを有するanammox菌由来のシトクロムc2015

    • 著者名/発表者名
      平 大輔, 能登原 暁穂, 中村 照也, 山縣 ゆり子, 古川 憲治, 藤井 隆夫
    • 学会等名
      日本農芸化学会2015年度大会
    • 発表場所
      岡山大学(岡山県岡山市)
    • 年月日
      2015-03-27 – 2015-03-29
  • [学会発表] 嫌気性アンモニア酸化(anammox)のエネルギー代謝と窒素含有廃水の処理2014

    • 著者名/発表者名
      藤井隆夫
    • 学会等名
      日本生体エネルギー研究会 第40回討論会
    • 発表場所
      愛媛大学(愛媛県松山市)
    • 年月日
      2014-12-12
    • 招待講演
  • [学会発表] 廃棄物最終処分場の浸出水調整池における窒素除去と微生物群集構造2014

    • 著者名/発表者名
      平 大輔、藤井隆夫、矢吹芳教、相子伸之
    • 学会等名
      第21回日本生物工学会九州支部熊本大会
    • 発表場所
      熊本大学(熊本県熊本市)
    • 年月日
      2014-12-06
  • [学会発表] anammox菌特有ヒドラジン合成酵素の構造と機能の解明2014

    • 著者名/発表者名
      市川智美, 平 大輔, 中村照也, 山縣ゆり子, 古川憲治, 藤井隆夫
    • 学会等名
      第21回日本生物工学会九州支部熊本大会
    • 発表場所
      熊本大学(熊本県熊本市)
    • 年月日
      2014-12-06
  • [学会発表] anammox菌のヒドロキシルアミン酸化還元酵素によるヒドロキシルアミン酸化反応と一酸化窒素還元反応2014

    • 著者名/発表者名
      平 大輔, 入佐 達也, 大田原 赳之, 中村 照也, 山縣 ゆり子, 古川 憲治, 藤井 隆夫
    • 学会等名
      第87回日本生化学会大会
    • 発表場所
      国立京都国際会館(京都府京都市)
    • 年月日
      2014-10-15 – 2014-10-18
  • [学会発表] anammox菌で発現している化学修飾チロシン配位ヘムを有するシトクロムcの構造と機能2014

    • 著者名/発表者名
      能登原 暁穂, 平 大輔, 中村 照也, 山縣 ゆり子, 古川 憲治, 藤井 隆夫
    • 学会等名
      第87回日本生化学会大会
    • 発表場所
      国立京都国際会館(京都府京都市)
    • 年月日
      2014-10-15 – 2014-10-18
  • [学会発表] anammox菌のトリヘムシトクロムcの発現とその性質2014

    • 著者名/発表者名
      大田原赳之, 平大輔, 古川憲治, 藤井隆夫
    • 学会等名
      2014年度日本農芸化学会西日本支部大会
    • 発表場所
      佐賀大学(佐賀県佐賀市)
    • 年月日
      2014-09-18 – 2014-09-19
  • [学会発表] anammox菌のオルガネラ様構造体に存在する活性酸素除去系2014

    • 著者名/発表者名
      西山孝、藤英博、服部正平、古川憲治、藤井隆夫
    • 学会等名
      2014年度日本農芸化学会西日本支部大会
    • 発表場所
      佐賀大学(佐賀県佐賀市)
    • 年月日
      2014-09-18 – 2014-09-19

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公開日: 2016-05-27  

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