研究課題/領域番号 |
26450108
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研究機関 | 独立行政法人農業・食品産業技術総合研究機構 |
研究代表者 |
鈴木 聡 独立行政法人農業・食品産業技術総合研究機構, 食品総合研究所応用微生物研究領域, 主任研究員 (90353979)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | Aspergillus / Light / con gene / conidia |
研究実績の概要 |
糸状菌無性胞子(分生子)中には、光により高発現する機能未解明のタンパク質が数多く含まれる。我々はAspergillus nidulansの光誘導分生子タンパク質Conが、植物種子の成熟乾燥過程で高発現するタンパク質に類縁のhydrophilinに分類され、かつ、栄養菌糸では短時間の光照射に応じて一過的に発現上昇する事を見出したが、その光による発現制御メカニズムは不明である。そこで、con遺伝子上流の光応答因子結合配列に結合するタンパク質複合体を同定することで、これら遺伝子の発現制御機構を明らかにすることを目的に以下の実験を行った。 1.これまでの研究で明らかになった光応答因子結合配列の配列情報を元に外注にて50bpのプローブDNAを合成し、PCR増幅にてビオチン化及びFITC化プローブを作成した。2.A. nidulansの暗培養菌体を回収後10分間の光照射培養及び対照区として継続暗培養を行い、それぞれの菌体から核タンパク質を抽出した。DNA結合タンパク質の濃縮にはヘパリンカラムが有効であることが解った。3.DNA-タンパク質の結合に適したバッファー条件を詰めるため、予備実験としてEMSAを試みた。共雑タンパク質の非特異結合を防ぐため、L-アルギニンとNP-40の添加が有効であることが解った。バッファー塩濃度を上げると非特異吸着だけでなく、特異的なDNA-タンパク質相互作用も阻害されるため塩濃度の調整は適当ではないことが解った。その結果、再現可能な形でDNA-タンパク質複合体を検出することに成功した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
プローブDNAの作成と核たんぱく質の抽出に成功したが、想定外の実験結果としてDNA-タンパク質複合体の条件検討に予想外の時間を要し、結合タンパク質の同定にいたらなかったため。しかしながら、再現性よくDNA-タンパク質複合体を検出する条件を決めることができたため、実験の遅れは想定内で済んだと考える。
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今後の研究の推進方策 |
1.核タンパク質とビオチン化プローブDNAを混合し、ストレプトアビジンビーズを用いたDNAアフィニティー沈殿法により結合タンパク質複合体を回収する。2.結合タンパク質をSDSPAGEにて検出する。3.ゲル内トリプシン消化を行う。4.ペプチドMSフィンガープリンティングによりタンパク質複合体の同定を行う。5.同定されたタンパク質の遺伝子をA.nidulansのゲノムデータベースより検索し、PCRにて遺伝子断片を取得し、クローニングする。6.無細胞タンパク質合成キットにてリコンビナントタンパク質を合成する。7.EMSAにて各タンパク質と光応答因子結合配列との相互作用を確認する。8.FRETあるいはBiFC、あるいはその組み合わせによる3者間相互作用観察により、タンパク質間相互作用をin vivoで観察確認する。9.上記により、光応答因子複合体の構成タンパク質と確認された物について遺伝子破壊株及び過剰発現株を作成し各株における既知hydrophilin遺伝子発現をノザンブロットで解析する。
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