メタノール資化性酵母 Ogataea minuta において自在な遺伝学的解析を可能とすべく、有性生殖が可能な株を確立し、また、染色体に組み込まれることなしに自律的に複製可能なプラスミドの構築を行うことを目的とする。平成 28 年度は、以下のような研究を行った。
前年度に取得した O. minuta NBRC 10746alpha 株と、二重薬剤耐性(ゼオシンおよびハイグロマイシン B)を利用することにより、NBRC 10746 株における二倍体を取得することに成功した。この二倍体株は一倍体に比較して約 1.3 倍の大きさであり、倍増時間や形態は一倍体株とほぼ同一であること(YPD 培地、30℃ における倍増時間約 120 分、扁平率約 90%)を明らかにした。また、この二倍体株が効率よく胞子形成を行わせる条件を見出し、マイクロマニピュレータによる胞子の四分子解析に成功した。これより、O. minuta においても遺伝学的解析手法が適用可能であることを明らかにした。 前年度に取得した自律複製配列(ARS)保有プラスミドの有効性を調べるため、グリコシルホスファチジルイノシトールの脂質リモデリングに関与する PER1 遺伝子の破壊を試みた。その結果、O. minuta において per1 遺伝子破壊株は重篤な増殖遅延を示すことを明らかにした。この増殖遅延の表現型は、O. minuta の ARS および PER1 遺伝子(Saccharomyces cerevisiae 由来あるいは O. minuta 由来)が挿入されたプラスミドを導入することにより相補されることを見出した。これにより、ARS を含むプラスミドが O. minuta において実用可能であることを明らかにした。
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