研究課題/領域番号 |
26450113
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研究機関 | 地方独立行政法人大阪市立工業研究所 |
研究代表者 |
永尾 寿浩 地方独立行政法人大阪市立工業研究所, 生物・生活材料研究部, 研究室長 (30416309)
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研究分担者 |
田中 重光 地方独立行政法人大阪市立工業研究所, 生物・生活材料研究部, 研究員 (20509822)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | Staphylococcus aureus / S. epidermidis / アトピー性皮膚炎 / パルミトオレイン酸 / 皮脂 / 抗菌活性 / 菌叢 / スキンマイクロバイオーム |
研究実績の概要 |
皮膚の微生物・菌叢は、健康と疾病に関与している。そこで、アトピー性皮膚炎(Atopic dermatitis, AD)などの疾患と菌叢の関係に注目した。皮膚には多種類の微生物が存在し、Staphylococcus aureus (Au)とS. epidermidis (Ep)の研究が盛んである。健常者ではAuよりもEpが優勢に存在するが、AD患者の炎症部ではEpよりもAuが優勢に存在し、ADの炎症悪化に関与している。そこで、Auを抑制しEpを抑制しない素材の研究を目的とした。 我々が単離した細菌Aeromonas hydrophila N-6 (以下N6株)は、植物油(TAG)を基質とした時、原料油を構成する脂肪酸の炭素数を2-4個減少させ、ワックスとして菌体内に蓄積する。9cis-C18:1(オレイン酸)を豊富に含む向日葵油(9cis-C18:1含量81%)を基質としたとき、7cis-C16:1と5cis-C14:1の混合物(N6脂肪酸)が蓄積されるため、得られた脂肪酸混合物から7cis-C16:1を精製する必要がある。 N6脂肪酸とラウリルアルコールをリパーゼ(R. japonicusまたはC. rugosa由来)でエステル化後、エステル画分と未反応脂肪酸画分の脂肪酸組成を調べた。その結果、いずれのリパーゼを用いても、9cis-C18:1は除去できたが、5cis-C14:1が除去されず、7cis-C16:1を精製できなかった。これは、両リパーゼは、カルボン酸と、カルボン酸側から最初に来る二重結合の距離が重要であり、9cis-C18:1に良く作用するが、7cis-C16:1と5cis-C14:1の作用性に差がないためである。従って、リパーゼによる7cis-C16:1と5cis-C14:1の分画は困難と判断した。 次に、工業スケールに適用可能なODSオープンカラムを用いた精製を試みた。ODSを充填したカラムにN6脂肪酸をアプライし、メタノール:水:トリフルオロ酢酸=95:5:0.05で溶出させたところ、7cis-C16:1と5cis-C14:1が分画され、7cis-C16:1含量が86%になった。抗菌活性を調べたところ、Auを抑制しEpを抑制しない選択的抗菌活性が認められた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究の目的は7cis-C16:1の精製である。ODSオープンカラムで精製できたが、最も研究成果を望んでいた酵素法による精製は、リパーゼの基質特異性に問題があり、達成できなかった。研究期間を延長し、より良い研究にするため、その原因について調べる。
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今後の研究の推進方策 |
工業的に利用可能なリパーゼで、脂肪酸特異性を有するものは、過去の知見から、Candida rugosaとRhizopus oryzae由来のリパーゼである。このリパーゼは、微生物変換で作成した7cis-C16:1と5cis-C14:1の作用性に殆ど差がなかった。これは、カルボン酸と、カルボン酸側から最初に来る二重結合の距離が重要であると推定した。そこで、一部の植物油に存在するパルミトレイン酸、9cis-C16:1の特異性について調べる。実験を行う前の推定であるが、9cis-C16:1は前記二重結合の距離が大きいため作用性が良い、つまり、9cis-C16:1>7cis-C16:1=5cis-C14:1ではないかと考えた。これについて検証を行い、本研究を完成させる。
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次年度使用額が生じた理由 |
本研究の目的は7cis-C16:1の精製である。ODSオープンカラムで精製できたが、最も研究成果を望んでいた酵素法による精製は、リパーゼの基質特異性に問題があり、達成できなかった。研究期間を延長し、より良い研究にするため、その原因について調べる必要が生じた。
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次年度使用額の使用計画 |
29年度の研究に用いるリパーゼや脂肪酸などの試薬代に経費を要することが推定されることなどから、リパーゼや脂肪酸などの試薬代に使用する。
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