研究実績の概要 |
本研究は毒性化合物のセンサータンパク質Keap1が、様々なストレス化合物と結合し、これによる三次元構造変化を通して、ストレスシグナルを下流の生体防御系の活性化へと導く分子機構の解明を目指したものである。Keap1はストレス化合物と結合することで構造を変化させる分子スイッチであるため、化合物との結合前後の構造変化を結晶構造解析により原子分解能で明らかにすることを目指す。 本年度は前年度の条件検討の結果を基に、Keap1のセンサー領域について長さの異なる2種類の組換タンパク質を大腸菌を用いて大量発現し、この試料を以下の方法で高純度に精製した。まずNi-NTAカラムによるアフィニティ精製を行い、続いてゲルろ過クロマトグフィー精製を実施した。SDS電気泳動により純度を確認したところ、それぞれ、95%以上の高純度のタンパク質を数ミリグラムのオーダーで得ることができた。また、センサーシステインを変異させた組換タンパク質も発現・精製し、結晶化を行った。複数の結晶化スクリーニングキットを用いて、結晶化マイクロプレートを用いて結晶化条件を検討した。得られた結晶については放射光施設での結晶回折実験を実施した。 さらに機能解析の観点から様々なストレス化合物との相互作用について検討を実施した。Keap1を介して細胞の生体防御系を活性化すると考えられている以下の化合物、L-スルホラファン、D3T (Z 3H-1,2-ジチオール-3-チオン )、ケルセチン、イソリキリチゲニン、N-エチルマレイミド、N,N-ジメチルホルムアミド、イソチオシアン酸フェネチル、カーノソール、マロン酸ジエチル、tert-ブチルヒドロキノン、エブセレン、オルチプラズについてKeap1のセンサーシステインとの反応性を検出する新しい手法を開発することに成功した。
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