本研究は毒性化合物センサーであるKeap1が、様々なストレス化合物と結合し、これによる三次元構造変化を通して、ストレスシグナルを下流の生体防御系の活性化へと導く分子機構の解明を目指したものである。Keap1はストレス化合物と結合することで構造を変化させる分子スイッチであると考えられるため、本研究では化合物と結合前後の分子レベルの構造変化を結晶構造解析により明らかにすることを目指したものである。 種々の化合物と組換型Keap1センサーとの相互作用解析を実施し、また、センサーシステインを変異させた変異型Keap1、およびセンサー領域に加えてパートナー分子との相互作用する部位を含んだKeap1の組換蛋白質について大量発現と高純度精製および結晶化スクリーニングを実施した。その結果、変異型Keap1の微結晶を得ることに成功した。当初はX線回折を確認できなかったが、変異型Keap1の結晶化条件の改善を行い、二種類の変異型Keap1について10~50ミクロン程度の結晶を得るに至った。つくば高エネ研のPhoton Factoryにて構造解析に十分な3.2Å分解能のX線回折斑点を確認した。複数の結晶が重なった状態で結晶化していたため構造解析が可能なデータ取得には至らず、最終年度も引き続き結晶化条件の検討とPhoton FactoryでのX線回折実験を行った。パートナー分子との共結晶化のための複合体試料の調整も行なったが、こちらは海外のグループにより先行して複合体結晶構造がデータベースに登録されたため、その後の研究実施を見送った。
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