研究実績の概要 |
研究代表者はAspergillus oryzae由来タンナーゼ(AoTanA)に特徴的なループ構造及び、ループ内に存在するKex2様プロテアーゼによるプロセッシングを受けるLys-Arg配列に着目し、該当箇所に関する変異酵素を作製し、プロセッシング機構及び基質認識に及ぼす影響について検討した。A.oryzae RIB40由来AoTanAのループ構造内に存在する2ヵ所のLys-Arg配列のArg311、Arg316をアラニンに変異させた酵素(AoTanA R311A/R316A)及びLys310からArg316を欠失させた酵素(AoTanA⊿KR)を作製し、各酵素はPichia pastorisを用いて発現させた。精製酵素のSDS-PAGEからR311A/R316Aはwild-typeと同様のプロセッシングを受けており、Argのみの変異はプロセッシング阻害に影響しないことが示唆された。一方、⊿KR変異酵素ではプロセッシング阻害が確認された。⊿KR変異酵素では、活性が野生型酵素よりも高くなり、構造の安定化が寄与していると推察された。これらの成果は、研究報文として発表した(Koseki et al., Biochem. Biophys, Res. Commun., 482, 1165-1169 (2017))。 また、A. oryzae由来でフェルラ酸エステラーゼの調査に用いられる4つの合成基質には全く反応せず、天然の基質からフェルラ酸を遊離する新規な酵素を取得した。本酵素のフェルラ酸エステラーゼ活性には活性中心セリン残基の両隣のトリプトファン残基が関わっていることが、変異解析から明らかとなった。本成果は、研究報文として発表した(Koseki et al., J. Mol. Catal. B: Enzym., in press)。
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