ストレスから派生した疾患の中に、多くの腎疾患が注目されているが、腎臓のストレスバイオマーカが少ないため、発症メカニズムの解明が困難である。本研究は脳と腎臓両方に発現するaddicsinタンパク質に着目し、ストレス惹起剤PTZと高架十字路を用い、addicsinの脳と腎臓の関連性を検証した。平成26年度はaddicsinは腎臓のバイオマーカーとして使用可能である結果を得た。また、ストレスが腎臓血管の充血、糸球体基底膜の肥厚、糸球体メサンギウム基質の増加等腎障害をもたらす現象も観察した。平成27年度はin vitro培養系を用い、生体内と同様なaddicsin変化に基づき、物理条件の温度、酸素及びpH条件を制御しながら、32℃とpH6.5および15%低酸素の培養条件で培養したところ、生体内とほぼ同様なaddicsin変化に達し、HE、MT、PAS染色により、糸球体基底膜の肥厚および糸球体メサンギウム基質の増加が観察された。今年度はストレス誘発培養系とストレスマウスモデルの比較により、再吸収を司る尿細管に存在する細胞外マトリクスであるI型、IV型コラーゲンはストレスを受けた短期間内では大きな発現変化がないものの、創傷治癒に関与するV型コラーゲンはaddicsinと共に素早く発現変化を呈する結果を得た。ストレス誘発条件から正常条件に戻すと、V型コラーゲンは組織の回復と共に消失することから、V型コラーゲンは腎組織の治癒に関与することを示唆する。上記の成果を平成28年に第48会日本結合組織学会、第68回日本生物工学会および平成29年に化学工学会つくば化学技術会、第82回日本化学工学会年会でそれぞれ発表した。また、これらの成果をまとめ、論文を作成し、学術国際誌Biochemistry and Biophysics Reportsに投稿し、現在審査中である。
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