研究課題
栄養・食餌の変化は、内分泌経路や細胞内情報伝達経路を介して受容され、メチル化やリン酸化など翻訳後修飾によって細胞内タンパク質に刻印される。“刻印(修飾)”されたヒストンや転写制御因子などはその機能が変化し、転写環境をダイナミックに変化させることで、生体の恒常性を維持している。絶食などの栄養・食餌変化は、細胞に受容され、遺伝子発現や代謝物の変化を惹起することで恒常性を維持する。線虫においては、短期(1日)絶食によって、寿命延長が見られるが、その分子機序は全く不明であった。線虫の飼育は大腸菌を餌としており、短期絶食の際は、大腸菌を塗布しない培地で飼育している。絶食期間はすべての栄養源を絶っているため、単一の栄養素を絶つ事が必要なのか、また複数もしくはすべての栄養素を絶つ事が必要なのかはわかっていない。本年度は、どの栄養素が寿命制御に重要な役割を果たしているかを探索し、その制御機構を明らかにする事を目的に実験を行った。
2: おおむね順調に進展している
短期絶食に重要な栄養素について、候補を絞り込んだ。また、それらの量を測定する分析技術の立ち上げを行い、特定の栄養素の量を解析する事が可能となった。この技術は、本研究に強力な推進力をもたらす事が期待できる。従って、概ね順調に進展している。
これまでに、sams-1遺伝子変異体の表現型の解析を行い、発表してきた(J. Recept. Signal Transduct.,2013 )。その解析の中で、sams-1遺伝子変異体と同じ表現型を示す遺伝子を見いだした。この遺伝子は、そのモチーフからメチル化酵素と推定される。この遺伝子のノックダウンを行うと長寿命を示すこと、また、sams-1遺伝子変異体にノックダウンを行ってもさらなる寿命延長は見られないことから、sams-1遺伝子と同一経路で寿命延長に作用していることを突き止めている。 そこで、本研究では、このメチル化酵素の機能と短期絶食による寿命延長への関与を解析する 。
短期絶食の際にどのような遺伝子群の発現や代謝物が変化するかを網羅的に解析するために、使用計画を一部変更し外部委託を行う事とした。現在それに必要な線虫を準備している段階である。
網羅的解析に使用する線虫サンプルの準備ができ次第、外部委託解析を行う予定である。また、そこで検出された候補代謝物や遺伝子の解析に使用する予定である
すべて 2014 その他
すべて 学会発表 (1件) 備考 (1件)
http://akif2.tara.tsukuba.ac.jp/