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2014 年度 実施状況報告書

C4植物に特化した光合成循環的電子伝達経路の解析

研究課題

研究課題/領域番号 26450122
研究機関京都大学

研究代表者

遠藤 剛  京都大学, 生命科学研究科, 准教授 (90201962)

研究期間 (年度) 2014-04-01 – 2017-03-31
キーワードC4光合成 / 光合成電子伝達 / 循環的電子伝達 / NDH / フラベリア / クロロフィル蛍光 / P700
研究実績の概要

キク科の一年草、フラベリア(Flaveria bidentis )は形質転換が可能な数少ないC4植物の一つである。フラベリアの形質転換に実績の高いAustralian National University のvon Caemmerer博士のグループからの技術導入とその改変で高い効率での形質転換法を確立した。
申請者は既にNDHの構造維持に必須なサブユニットであるndhNを標的とした、RNAi法およびアンチセンス法によりNDH抑制株の作出に成功している。これらの株では、NDH複合体の発現量が野生型の1割以下に抑制されていて、NDH活性もきわめて低下していた。また、野生型に比べて光合成電子伝達の異常や炭酸固定速度の低下が見られ、C4光合成が正常に機能するにはNDH依存の循環的電子伝達系が必須であることを示す予備的結果を得ている。今年度は、論文投稿にむけて、これらデータの再現をとった。現在論文投稿中。
また、得られた形質転換体の遺伝的解析を行い、純系を得ることに努めるとともに、抑制レベルの異なる変異株の取得を目指している。
C4植物はC3植物に比べて特に強光、高温時に高い光合成活性を示すことから、これら条件下での光合成速度をNDH経路抑制(欠損)株と野生株とで比較した。作成したNDH変異株の表現型を詳細に解析するため、光合成電子伝達については、PAMクロロフィル蛍光測定器(光化学系IIの電子伝達と過剰エネルギーに対する防御機構の測定装置)、光化学系Iの反応中心であるP700の酸化還元(電子伝達)測定器を用いた。NDH抑制株ではクロロフィル蛍光パラメータのNPQ(チラコイド膜内外のプロトンこう配の指標)が低いことから、ATP生成に支障がでていることが推察される。炭酸固定については、CO2アナライザー(炭酸固定速度測定装置)を用いた。上記の電子伝達測定装置と併用することで、様々な光合成のパラメータを測定することで、NDHの欠損がC4光合成に及ぼす影響を明らかにできた。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

今回の主要は解析対象であるフラベリアの葉緑体NDH欠損株について、当初の目標通りの実験が遂行できた。光合成特性の解析の結果、C4光合成におけるNDH循環的電子伝達系の生理的重要性についての明確な結論をえることができ、現在論文投稿中である。
また、C4維管束細胞における特徴的電子伝達の実体については、同じNADP-MEタイプのC4光合成をおこなう植物間で大きなバラエティーが示され、材料とする植物の選択が重要であることが明らかになった。来年度は、特徴的な電子伝達パターンを示す、いくつかのC4植物を材料として、電子伝達活性の比較を行う。

今後の研究の推進方策

これまでの成果により、NDH循環的電子伝達の重要性が明らかになったので、今後は、NDHの欠損により、植物がどのような代謝変動を被り、どのような応答をしてストレスに対応しているのかを明らかにするため、メタボローム解析を試みる。また、この形質転換植物は、大気中の二酸化炭素濃度が上昇してC4光合成がC3光合成に対して優位性を持たなくなる将来の環境におけるC4植物の光合成をシミュレートするための好適な材料となるため、様々な生育環境にて栽培して、その光合成特性を野生型と比較してみたい。
C4維管束鞘細胞に特異的な光合成電子伝達についての更なる解析を進めるため、いくつかのC4植物から活性の高い維管束鞘細胞とそのチラコイド膜を再現性よく単離する方法を開発するとともに、クロロフィル蛍光とP700酸化還元を指標として、電子伝達の特徴を解析する。また、電子供与にかかわると思われるリンゴ酸の代謝についての形質転換体を作成することで、C4光合成特有の電子伝達系路の解明に役立てたい。

次年度使用額が生じた理由

今年度は、これまでに作成したC4フラベリア形質転換植物の栽培と光合成特性の解析が主要な研究内容となったため、予定していた実験用消耗品の購入が原則なかった。次年度は、今年度に予定されていたが、後回しになっていた生化学実験、分子生物学実験を集中して行うため、実験試薬等の消耗品の購入に今年度の残額を充てたい。

次年度使用額の使用計画

C4フラベリア形質転換植物における生化学的解析のために使用予定。特にチラコイド膜レベルでのNDH活性評価に使用するフェレドキシンは高価(5mgで約10万円)であるため、当初の予定に比べ多額の消耗品代が必要となる。

  • 研究成果

    (1件)

すべて 2015

すべて 学会発表 (1件) (うち招待講演 1件)

  • [学会発表] Cyclic electron transport in higher plants.2015

    • 著者名/発表者名
      遠藤 剛
    • 学会等名
      日本植物生理学シンポジウム
    • 発表場所
      東京農業大学
    • 年月日
      2015-03-16 – 2015-03-18
    • 招待講演

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公開日: 2016-05-27  

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