研究課題/領域番号 |
26450122
|
研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
遠藤 剛 京都大学, 生命科学研究科, 准教授 (90201962)
|
研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
|
キーワード | C4光合成 / 光合成電子伝達 / 循環的電子伝達 / NDH / フラベリア / クロロフィル蛍光 / P700 |
研究実績の概要 |
キク科の一年草フラベリア(Flaveria bidentis)は形質転換可能な数少ないC4植物のひとつである。申請者は既に光合成循環的電子伝達にかかわる葉緑体NAD(P)Hデヒドロゲナーゼ複合体(NDH)のサブユニット遺伝子の発現抑制形質転換体の作成に成功しており、本研究では、これらの形質転換体を材料として循環的電子伝達の生理機能の解明に努めている。昨年度までに形質転換体での NDHの発現量の抑制の確認を行うとともに、通常の生育条件下でNDHの発現抑制が植物の生育を阻害することを明らかにしている。H15年度は、様々な生育条件下での光合成活性や生育を比較することで循環的電子伝達の生理機能の解析を行った。光合成活性測定としてPAMクロロフィル蛍光法を用いた光化学系IIの電子伝達速度と熱放散速度、P700酸化還元による光化学系I周辺の電子伝達速度、CO2アナライザーによる炭酸固定速度の解析を行った。 解析結果は、意外にもC3植物で循環的電子伝達の役割が高いとされる強光条件より、弱光条件でよりNDH抑制の効果が大きく、特に炭酸固定速度が著しく影響を受けた。このことから循環的電子伝達により生成するATPは、弱光下で炭酸固定律速するが、ATP生成量が過剰となる強光下ではむしろ、炭酸固定経路のキャパシティーが律速因子となることが明らかになった。弱光下では生育が大きく阻害されるため、ATP要求性が高いC4植物において循環的電子伝達が重要な役割を果たしていると結論される。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
C4植物での循環的電子伝達系の役割の解明という当初の目的は、やや予想外ではあったが弱光下でのATP律速を解除しているという明確な機能を提示できたことで、ほぼ達成しつつあると考える。この結論はこれまで研究されてきたC3植物での結果とは大きく異なるもので、C4植物は炭素代謝系のみならず電子伝達系もC3から独自な進化を遂げていることを示している。これまでに得た知見をまとめた論文を現在投稿中である。
|
今後の研究の推進方策 |
最終年では、光環境が変動する自然光環境下での生育と光合成特性を詳細に解析することで循環的電子伝達が生理条件でも重要であることを立証したい。また、C3植物をC4化する上で炭素代謝系の改変だけではなくATP生成系の付与が不可欠であることを提唱し、将来の育種戦略を策定したいと考える。
|
次年度使用額が生じた理由 |
比較的コストのかからない光合成活性測定や栽培試験を前倒しで進めた一方で高額な消耗品代が必要な分子生物学実験、生化学実験が来年度以降に計画シフトしたため。
|
次年度使用額の使用計画 |
分子生物学実験、生化学実験にかかわる消耗品代、実験委託代が支出の半分以上を占める予定。その他、海外旅費、論文出版に関わる費用、電気代等に使用する。
|