研究課題/領域番号 |
26450124
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研究機関 | 鳥取大学 |
研究代表者 |
有馬 二朗 鳥取大学, 農学部, 准教授 (80393411)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | アミノリシス / D体特異的アミノ酸アミド加水分解酵素 / 副反応 / 立体構造 / ペプチド結合形成反応 |
研究実績の概要 |
MEROPSデータベースのfamily S12に分類されるSerペプチダーゼの中には、加水分解の副反応として高いアミノリシス活性を示す酵素が多く、その機能はペプチド/アミノ酸を対象とした新奇物質/新奇機能の探索研究に応用可能である。我々はこれまでに、放線菌のfamily S12酵素であるD体特異的アミノ酸アミド加水分解酵素(DAH)を対象に、ペプチドの合成に係る研究を進めてきた。本研究では、アミノリシスの反応機構の解明と機能性物質構築ツールとしての利用可能性の拡大を目的として、DAHの立体構造解析とそこから導き出される機能との相関解析を行った。 昨年度の研究においてDAHの立体構造が決定され、その構造と機能との相関について考察された。また、活性中心ポケットの残基のAlaスキャンにより、Ile266とIle338がアミノリシスにおけるアシル受容体認識に関わることを突き止めた。本年度では、Ile266とIle338、及び立体構造で確認されたジアミノアルカンとの相互作用に関わる残基に焦点を当て、変異解析による残基の機能の解明及び生成物多様性の拡大を目標とした。 Ile266及び338については、Ala以外にもGlyやSerへの置換により、アシル受容体認識に大きな変化が見られ、生成物としてより長いペプチドの合成が実現した。そこで両Ile残基の2重変異で更なる大きなペプチドの合成にチャレンジしたが、2重変異による顕著な効果は見られなかった。一方で、ジアミノアルカンとの相互作用に関わる残基の機能解析では、Alaスキャンを行うことでThr145が重要な残基として同定され、本残基を嵩高い残基に置換するとアミノリシス活性が向上し、酸性アミノ酸に置換すると加水分解活性が向上した。以上の結果から、Thr145は加水分解における水の認識の一部に関わっている可能性が示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初の計画では、放線菌由来のD体特異的アミノ酸アミド加水分解酵素(DAH)の活性部位を構成する残基を様々な別のアミノ酸残基に置換し、生成物多様性の拡大を2年目(平成27年度)に計画しており、研究実績の概要に示されるよう、DAHの活性部位を構成する残基の変異による機能解析を通し、いくつかの変異酵素で、合成されるペプチド(生成物)の長さの延長が実現した。 得られた結果の中で、昨年度は基質ポケットのスペース拡大が、アシル受容体の特異性が変化することが示されたが、今年度では、スペース拡大以外にも活性部位のアミノ酸残基の置換基の違いで、アシル受容体の多様性に変化がきたされることが証明され、更には加水分解の制限/アミノリシス活性の向上にも繋がる変異酵素も得られた。これは、DAHが合成できるペプチドの多様性拡大について理論的なデザインにより可能にするヒントを得たことになり、本プロジェクトの「機能性物質探索に寄与できる、より強力な生体触媒の創出」の実現に向け、大きく前進したことになる。最終年度(平成28年度)では、DAHと、これまでに得られた変異酵素の反応を使用し、アミノ酸/ペプチド類を中心としたケミカルライブラリーを構築し、新たな機能物質の探索に着手する予定である。これら次年度の研究予定も含め、当初に予定していた計画は、概ね予定通りに進展している。
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今後の研究の推進方策 |
現在までの進捗状況に記載した通り、平成28年度において、放線菌のD体特異的アミノ酸アミド加水分解酵素(DAH)の反応で生成されるペプチドの拡大に向け、アシル受容体認識の機能解析と機能変換が行われ、DAHの基質認識やアミノリシス反応のメカニズムの一部が解明されたと共に、生成物多様性の拡大という目標も達成された。このように研究進捗の状況は、ほぼ当初の計画通りであり、今後の研究についても、申請書に記載された内容/計画に沿って遂行できるものであると考えている。 最終年度(平成28年度)では、DAHの及び変異酵素の触媒反応を利用したケミカルライブラリーの構築を行うと共に、別のプロジェクトで構築された有用物質探索に係る評価系を利用し、新たな有用/機能物質探索研究を進める予定である。
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