研究課題
我々は、これまでに、N-ミリストイル化を指令するN-ミリストイル化シグナルを含むタンパク質N末端10アミノ酸の配列を用いて、無細胞タンパク質合成系における代謝標識により、簡便にN-ミリストイル化タンパク質を試験管内で同定する手法を確立した。26-27年度における本研究では、Swiss-Protタンパク質データべースに収集された、アイソフォームを含む約46,000個の全ヒトタンパク質にこの手法を適用し解析を行ってきたが、28年度の本研究ではこの解析を完了させた。その結果、最終的にヒト細胞内には300個を超すN-ミリストイル化タンパク質が存在し、そのうち171個が新規のN-ミリストイル化タンパク質であり、150個程度と考えられてきたN-ミリストイル化タンパク質は実際にはその2倍以上存在することが明らかになった。これらの新規N-ミリストイル化タンパク質中には、これまで殆ど報告がなかった膜貫通タンパク質や核タンパク質が多数含まれており、その中にはがんや神経変成疾患等の原因タンパク質が多数含まれていた。これらのうち数個のタンパク質についてその細胞レベルにおけるN-ミリストイル化の機能を培養細胞への一過的発現により解析した結果、N-ミリストイル化に依存して、核、小胞体、ミトコンドリアといった細胞内小器官の形態に顕著な異常を誘導することが明らかになった。さらに、これらの異常は、2位Gly残基のAlaへの置換によるN-ミリストイル化の阻害や、N-ミリストイル化阻害剤の添加により消失することが明らかになった。これらの結果から、新たに見出されたN-ミリストイル化タンパク質の中には、疾患バイオマーカー、あるいは疾患治療のための標的分子としての利用できる分子が存在することが明らかになった。
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http://www.agr.yamaguchi-u.ac.jp/member/utsumi/index.html