研究課題
本研究の中心課題は、ピルビン酸デヒドロゲナーゼ複合体をリン酸化する特異的キナーゼの制御機構の解明を目指し、制御因子がキナーゼに及ぼす動的構造変化の解明を試みるものである。動的構造変化の解明には,内在Trpを利用した時間分割蛍光分光法を用いる。前年度に、キナーゼ,特に研究代表者が明らかにしてきたPDK2について、測定条件の最適化を行った。この最適条件を用い、ヌクレオチド、さらには、ピルビン酸を添加した際の運動変化を調べたところ、運動性の増加がTrpの蛍光時間変化より確認された。一方、PDK2にはTrpが3つ存在し、この運動性の増加は、C末端領域に存在するTrp383であることが結晶構造解析より示唆されていた。このため、Trp383以外の2つのTrpをPheに変換した2重変位体の作製を試みた。しかし、封入体への移行が多く確認され、微量に得られた標品の活性も著しく低いため本標品の使用を断念した。結晶構造解析より、3つのTrpの中で1つのTrpはタンパク質の内部に存在する。このため、Trp383、そして内部のTrp以外のTrp371をPheに置換した変異体を作製した。この変異体は、Wild Typeと活性、ヌクレオチドやピルビン酸との相互作用がほぼ等しかったため、蛍光を用いた運動性変化を明らかにした。この標品では、Trp383を含んだ領域の運動変化が、Wild typeに比べさらに明らかとなった。また、一連の研究を進めている際に、PDK2のジスルフィド結合の形成による2量体が多く観察された。本形成は、既報の物であるが、その形成はTrp383の隣の残基であるCys384による。この2量体形成は、C末端領域の運動性に大きく関わると伴に、PDKの機能制御に関わる物であると推察される。このため、変異体の作製はもとより、酸化還元による形成変化についても分析していく予定である。また、これらの条件を基礎にPDK1を題材として蛍光測定を進める予定である。
3: やや遅れている
本研究では、Trp蛍光を指標とした構造変化測定を実施するため、Trpからの蛍光情報の最大化が重要である。本標品には3つのTrpが存在するため、変異体によるTrpのPheへの変換を行い、変化を生じるTrpからの蛍光成分の抽出を行った。一方、発現には困難が生じ、GroEL-ESシステムの導入、さらには、変性を生じるTrp変換を特定することにより、研究を進めることが可能となった。この点が、やや遅れを生じた原因である。しかし、この点については改善され、これらの経験を次年度に生かすことにより、進捗状況は改善される物と考える。
前年度の研究では、Cys結合による運動変化など機能制御に対しての新たな知見が得られ、Cysの変異体の作製も順調に進んでいるため、この点についても知見を得られると考えられる。また、PDK1について、阻害剤による構造変化、活性変化を調べていく予定である。変異体の作製については、昨年度は多くの困難に直面したが、これらの経験を基礎に、リン酸イオン結合部位の検索を行う予定である。
予定していた学会発表を取りやめた事により差異が生じた。
本年度での学会発表に使用する予定である。
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すべて 雑誌論文 (3件) (うち国際共著 2件、 査読あり 3件、 オープンアクセス 3件) 学会発表 (2件) (うち招待講演 2件)
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