研究課題/領域番号 |
26450128
|
研究機関 | 長崎大学 |
研究代表者 |
畠山 智充 長崎大学, 工学研究科, 教授 (50228467)
|
研究分担者 |
海野 英昭 長崎大学, 工学研究科, 助教 (10452872)
|
研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
|
キーワード | レクチン / 蛋白質工学 / 糖鎖 / X線結晶構造解析 / 部位特異的変異 |
研究実績の概要 |
C型レクチンはその糖結合部位に,QPD(Gln-Pro-Asp)配列またはEPN(Glu-Pro-Asn)配列を持つものが多く,それぞれレクチンのガラクトース(Gal)特異性及びマンノース(Man)特異性に重要な役割を果たしていることが知られている。グミ(Cucumaria echinata)のGal特異的C型レクチンCEL-IのQPD配列をEPN配列に変えることである程度マンノース特異性を発現することをこれまでに明らかにしていたが,今回,CEL-Iの結晶構造をもとに,EPNの他に糖結合部位内に位置するTrp105をヒスチジン残基に置換した組換え体(EPNH-CEL-I)を大腸菌によって発現させ,その糖特異性と立体構造の検討を行った。その結果,EPNH-CEL-Iはマンノースに対する親和性が著しく上昇しており,マンノースとの複合体のX線結晶構造解析からも,His105がマンノースとの結合を増強させていることが明らかになった。このことから,C型レクチンのGalまたはMan特異性はQPD及びEPN配列のみではなく,近傍に位置するアミノ酸残基の性質によって大きく左右されることが明らかになった。 一方,海産無脊椎動物レクチンの中には毒素の一部として機能するものが存在しており,その一例としてラッパウニ叉棘毒液中に存在するGal特異的レクチンSUL-I及びそれに関連するタンパク質Contractin AのcDNAクローニングを行い,その組換えタンパク質の発現を行った。その結果,SUL-IはGal特異性を示す以外にラムノースに対する親和性がより強く,通常のGal認識レクチンとは異なる特異性を有していること,またそのX線結晶構造から,これまでに構造が決定されていなかった3つのドメインをもつラムノース結合レクチンであることが明らかになった。また,Contractin Aについては,そのアミノ酸配列の類似性及び人工脂質小胞(リポソーム)を用いた実験から,脂質分解酵素であるホスホリパーゼA2の一種であることが判明した。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初の大きな目標の一つであるレクチンの糖認識機構の解明及びその人為的変換の例としてC型レクチンCEL-Iを用いて,そのX線結晶構造をもとにした糖認識機構の解明とその人為的変換に成功した。このことはレクチンのみならず,タンパク質の分子認識機構の解明とその変換が詳細な立体構造解析結果を基盤として人為的にデザインすることが可能であることを示している。特に海産無脊椎動物は脊椎動物に比べてはるかに多様な未解明タンパク質を有していることが期待されることから,現在研究を進めている生物種を始め今後も多くの生物種から新規タンパク質を精製し,その構造及び生理活性発現機構を解明することは大きな有用情報をもたらすものと期待できる。これらの成果から,研究は順調に進展しているものと評価できる。
|
今後の研究の推進方策 |
今後は,ウニ,イソギンチャク,二枚貝類等から新規な構造と糖認識能を有するレクチンの精製を進め,その糖特異性をオリゴ糖類を用いた種々の物理化学的手法並びに糖鎖マイクロアレイ等を用いて解析するとともに,その天然型及び部位特異的変異体のX線結晶構造解析を行い,それらの生理活性発現機構を明らかにする。また,CEL-Iと同様,人為的な機能改変を試み,新規機能開発への有用な基礎情報の取得を目指す。
|
次年度使用額が生じた理由 |
ほぼ予定通りに研究が進んだが,比較的消耗品等の費用を節約することができたことに加え,学会・会議等に必要な旅費が予想より安く抑えられたこと等により次年度への予算に加えることとなった。
|
次年度使用額の使用計画 |
当初の予定通りの研究計画に沿って使用する予定であるが,特に最終年度は国際会議等において研究成果を発表することを予定しており,そのための旅費及び参加費としての使用に充てることを計画している。
|