研究課題/領域番号 |
26450130
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研究機関 | 宮崎大学 |
研究代表者 |
水光 正仁 宮崎大学, 農学部, 教授 (00128357)
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研究分担者 |
榊原 陽一 宮崎大学, 農学部, 教授 (90295197)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 硫酸転移酵素 / 翻訳後修飾 / チロシン硫酸化 / 分泌タンパク質 / 膜タンパク質 / エイズウイルス / 手足口病ウイルス / X線結晶構造解析 |
研究実績の概要 |
タンパク質の翻訳後修飾としてのチロシン硫酸化は、分泌タンパク質や膜タンパク質を標的とし、タンパク質分泌やタンパク質間相互作用、細胞間相互作用などを制御することで、炎症、免疫、恒常性などさまざまな生命機能の調節を行う。この翻訳後修飾としてのチロシン硫酸化は、ゴルジ体の膜結合酵素Tyrosylprotein Sulfotransferase (TPST)によって触媒される。近年、エイズや手足口病の病原ウイルスが、標的細胞表面のタンパク質チロシン硫酸化部位を認識することで、感染することが報告された。本研究では、結晶構造解析が終わっていないヒトhTPST1の精密な立体構造をまず決定し、TPSTが様々なタンパク質に対して硫酸化を行うメカニズムの解明を行う。次に、ウイルス感染予防および生体防御反応の制御などを目的として、TPSTの特異的阻害剤の探索を行う。 平成26年度は、①ヒトhTPST1の立体構造をまず決定した。②食品の機能性成分を使用して、hTPST2の特異的阻害剤の探索を行った。その結果、hTPST1は、大腸菌(Origami(DE3))を用い、シャペロン(GroES-EL)と共発現することで、可溶性タンパク質として大量発現させた。その後、精製を行い安定した収量を得た。反応後生成物である3’,5’-Phosphoadenosine phosphate (PAP)と基質となる補体C4タンパク質からデザインした11残基のペプチドとの共存下で結晶を得ることに成功した。また、hTPST2の特異的阻害剤の探索に関しては、オレアノール酸やβ-カロテンなどいくつかの食品機能性成分がTPST活性阻害作用を持つことが明らかとなった。特に、β-カロテンにおいては、その阻害様式の検討およびタンパク質レベルでの阻害効果を確認した。これらの研究結果から、食生活の改善や機能性食品によりTPST活性を制御することでウイルス感染防御や免疫システムを強化できる可能性が示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
X線結晶構造解析のターゲットであるヒトhTPST1の大量発現に成功し、その後の精製で安定した収量を得たこと。反応後生成物である3’,5’-Phosphoadenosine phosphate (PAP)と基質となる補体C4タンパク質からデザインした11残基のペプチドとの共存下で結晶を得ることに成功したことから。また、hTPST2の特異的阻害剤の探索に関して、オレアノール酸やβ-カロテンなどいくつかの食品機能性成分がTPST活性阻害作用を持つことを明らかにしたことから。
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今後の研究の推進方策 |
X線結晶構造解析のターゲットであるヒトhTPST1の結晶を用いてX線回折実験を行い、分解能1.6Åの回折データを得る。hTPST2をテンプレートとした分子置換法により位相を決定し、構造精密化を行い、hTPST1-PAP-C4ペプチド複合体として立体構造を決定する。また、ヒトTPSTの特異的阻害剤の探索に関しては、化合物ライブラリーを用い、ドッキングシミュレーションを行い、in silicoスクリーニングを行う。さらに、ゼブラフィッシュをモデルとしたTPST遺伝子ノックダウンによる生理機能解析を行う。
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