研究課題
タンパク質の翻訳後修飾としてのチロシン硫酸化は、分泌タンパク質や膜タンパク質を標的とし、タンパク質分泌やタンパク質間相互作用、細胞間相互作用などを制御することで、さまざまな生命機能の調節を行う。このチロシン硫酸化は、ゴルジ体の膜結合酵素Tyrosylprotein Sulfotransferase (TPST)によって触媒される。平成27年度は、ゼブラフィッシュをモデルとしたTPST遺伝子および活性硫酸PAPS合成遺伝子ノックダウンによる生理機能解析を実施した。ゼブラフィッシュには、3種類のTPSTが存在する。ゼブラフィッシュの受精卵にモルフォリノアンチセンスオリゴを注入し、3種類のTPST遺伝子の発現を抑制した。その結果、zTPST1およびzTPST1-likeの抑制胚では、脳構造に異常が見られた。また、zTPST1-likeの抑制では、尾の先端が屈曲し、zTPST2では体幹全体が湾曲した。さらに、3種類のzTPSTの発現をダブルノックダウンまたはトリプルノックダウンした結果、各zTPST遺伝子の抑制において見られた表現型が同時に観察されたり、胚発生が停止して生育途中で致死に至る胚が多数観察された。また、真核生物の生体内での硫酸化には、唯一の硫酸供与体である活性硫酸PAPSが必須である。これらのPAPS合成酵素遺伝子は2種類存在する。硫酸化の生理機能を解明するために、ゼブラフィッシュの受精卵にモルフォリノアンチセンスオリゴを注入し、これらの遺伝子のノックダウンを試みた。その結果、どちらの遺伝子をノックダウンした場合においても表現型の異常が顕著に見られた。特に、脊椎骨の形態形成に異常が見られた。これらのことから、TPSTは正常な発生において重要な役割を果たしており、活性硫酸PAPSは、初期胚発生過程において重要な生理学的役割を担っていることが示唆された。
2: おおむね順調に進展している
ゼブラフィッシュをモデルとしたTPST遺伝子ノックダウンによる生理機能解析を実施し、TPST遺伝子のノックダウンは胚発生が停止して生育途中で致死に至る胚が多数観察された。これらのことからTPSTは、正常な発生において重要な役割を果たしており、タンパク質チロシン硫酸化は生命を維持するのに必須であることが判明したため。また、真核生物の生体内での硫酸化には、硫酸供与体である活性硫酸PAPSが必須である。硫酸化の生理機能を解明するために、ゼブラフィッシュの受精卵にモルフォリノアンチセンスオリゴを注入し、これらの遺伝子のノックダウンを試みた。その結果、どちらの遺伝子をノックダウンした場合においても表現型の異常が顕著に見られた。特に、脊椎骨の形態形成に異常が見られた。これらのことから、活性硫酸PAPSは、初期胚発生過程において重要な生理学的役割を担っていることが示唆されたことから。
ゼブラフィッシュをモデルとしたTPST遺伝子ノックダウンによる生理機能解析から、TPSTは、胚発生に重要な影響を与えている。また、活性硫酸PAPS合成遺伝子をノックダウンした場合、表現型の異常が顕著に見られた。これらのことから、ノックダウン個体のプロテオーム解析を行うことで、高発現または低発現タンパク質を特定し、硫酸化に係わるタンパク質や代謝制御のメカニズムを明らかにする。
平成28年3月26日~28日の日本農芸化学会(札幌)出張において、事前見積額と実際の額に差が出て、次年度使用額が生じたため。
消耗品として使用予定。
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すべて 国際共同研究 (1件) 雑誌論文 (4件) (うち国際共著 4件、 査読あり 4件、 オープンアクセス 3件) 学会発表 (11件) (うち国際学会 1件、 招待講演 2件)
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