研究課題
タンパク質の翻訳後修飾としてのチロシン硫酸化は、分泌タンパク質や膜タンパク質を標的とし、タンパク質分泌やタンパク質間相互作用、細胞間相互作用などを制御することで、さまざまな生命機能の調節を行う。このチロシン硫酸化は、ゴルジ体の膜結合酵素Tyrosylprotein Sulfotransferase (TPST)によって触媒される。平成28年度は、結晶構造解析が終わっていないヒトhTPST1の精密な立体構造を決定した。3種類の基質ペプチドとhTPST1の複合体の立体構造を決定し、hTPST1が様々な基質タンパク質を硫酸化する機構を明らかにした。いずれの基質ペプチドもL字型に折れ曲がり、hTPST1の深い溝に結合していた。これらの成果を投稿論文としてまとめた。次に、hTPST2およびhTPST1の立体構造の情報を基に、hTPST1を大腸菌で変異酵素を作成し、構造と活性の関係を考察した。特に、酵素タンパク質の78および195番目のアルギニン、158番目のリジン、191および285番目のセリン等を中心にアラニンに変換し変異酵素を調製した。活性を測定して、TPSTの触媒活性と基質認識に必要なアミノ酸残基の特定を行った。その結果、TPST変異酵素は、R78A、K158Aなどいくつかの酵素で、活性の著しい低下が確認された。TPSTの触媒活性と基質認識に重要なアミノ酸残基のいくつかが明らかになった。次に、TPST遺伝子ノックダウンによる生理機能解析を実施した。その結果、ゼブラフィッシュzTPST1およびzTPST1-likeの抑制胚では、脳構造に異常が見られた。3種類のzTPSTの発現をダブルノックダウンまたはトリプルノックダウンした結果、胚発生が停止して生育途中で致死に至る胚が多数観察された。これらのことから、TPSTは正常な発生において重要な役割を果たしていることが示唆された。
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すべて 国際共同研究 (1件) 雑誌論文 (7件) (うち国際共著 6件、 査読あり 7件、 謝辞記載あり 7件、 オープンアクセス 6件) 学会発表 (6件)
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