研究課題
本研究は、フラビンモノヌクレオチド(FMN)とアポタンパク質の結合反応を1つの熱力学的過程として捉え、分子進化の過程でどのようなことが起こって特定の配列に集束したのかという問題について、高次構造を基盤とした解析を行い、FMNを結合するタンパク質の進化的な成り立ちを明らかにすることを目的としていた。平成26、27年度には、FMN結合タンパク質(FMN-bp)、フラボドキシン(Fld)及びフラボレドキシンの変異体を得、蛍光滴定法によるFMNに対する解離定数(Kd)を測定した。一方で、表面プラズモン共鳴(SPR)法及び等温滴定型熱量測定(ITC)法による野生型FMN-bpのFMNに対するKdの測定を行った。その過程で、FMN-bpのアポ化の方法とその安定性を再検討し、今後に繋がる大きな成果を得た。すなわち、従来、フラボタンパク質のアポ化において、トリクロロ酢酸などの強酸を用いる方法が一般的であったが、グアニジン塩酸による変性と段階透析法によるリフォールディングを組み合わせることにより、FMN結合能を保持したアポタンパク質を大量に得ることができるようになった。そこで、最終年度は、この方法を用いて、SPR法による解析に関して、タンパク質の固定化や測定条件について十分な検討を行った上で測定を行うことができた。また、この反応におけるイオン強度の影響を調べ、Fldの場合とは異なることを明らかにし、FMN結合反応における官能基の認識順序が異なる新たな機構の提案を行った。さらに、アポFMN-bpを含め、多くのタンパク質のX線結晶構造解析を行い、構造学的な知見によってこの機構の論拠を固めることができた。
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すべて 国際共同研究 (1件) 雑誌論文 (2件) (うち国際共著 2件、 査読あり 2件) 学会発表 (3件)
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