研究課題/領域番号 |
26450135
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研究機関 | 北海道大学 |
研究代表者 |
生方 信 北海道大学, (連合)農学研究科(研究院), 教授 (60168739)
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研究分担者 |
重冨 顕吾 北海道大学, (連合)農学研究科(研究院), 助教 (20547202)
三橋 進也 北海道大学, (連合)農学研究科(研究院), その他 (60526672) [辞退]
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | エポジムノラクタム / オートファジー / 全合成 / 構造ー活性相関 |
研究実績の概要 |
我々はモリノカレバタケ(Gymnopus sp.)の菌糸体培養液から新規なオートファジー誘導物質として(+)-エポジムノラクタム(1)を発見した(Phytochemistry, 114, 155-159 (2015))。(+)-エポジムノラクタム(1)は溶液中で3種類の互変異性体として存在している。平成27年度は、1の初の全合成を最適化し、各互変異性体のNMRの帰属を行った。これらの成果を原著論文としてまとめ、ネーチャー出版の雑誌であるThe Journal of Antibioticsに掲載された(J. Antibiotics, 68, 721-724 (2015))。さらに構造ー活性相関研究を遂行するために、天然体のエナンチオマーである(-)-エポジムノラクタム (ent-1)の全合成を行った。D-(+)-DIPTを用いたシャープレス不斉酸化を行い、cis-4-benzyloxy-2-buten-1-ol (2)から(2S,3R)-4-benzyloxy-2,3-epoxy-1-butane-1-ol (3)を86%eeで得た。リパーゼを用いた速度論的光学分割により98%eeのアセチル誘導体(4)を81%の収率で得た。加水分解により所望の(-)-3を得た。TEMPO酸化、n-BuMgClを用いたグリニャール反応を行いエポキシアルコール (6)を得た。脱保護、2当量のNaOClを用いたTEMPO酸化を行いラクトン (8)を得た。アンモニアによる開環、Dess-Martin酸化により(-)-エポジムノラクタム (ent-1)を合成した。合成(+)-1は、ポジティブコントロールであるラパマイシンと同様、オートファジーマーカーであるLC3-IIの蛋白量を亢進させ、オートファゴソーム分解のマーカーとされるp62の蛋白量を低下させる傾向を示した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初の計画どおり、(+)-エポジムノラクタムの鏡像異性体である(-)-エポジムノラクタムの全合成に成功した。
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今後の研究の推進方策 |
平成28年度は、今年度中にルート開発に成功した開環型互変異性体のN,N-dimethyl誘導体(9)とanti型の閉環型互変異性誘導体に相当するO-methyl誘導体(10)の合成を最適化し、NOESYを含む詳細なNMR解析と活性評価に必要な量の確保を行う。脂肪酸合成の阻害剤として知られているセルレニンの活性評価を行ったところ、(+)-エポジムノラクタムとは対照的な結果が得られた。すなわち、セルレニンはLC3-IIの蛋白量を低下させ、p62の蛋白量を逆に亢進させることで、オートファジーを阻害することを示唆する結果を得た。オートファジーの誘導時に、ホスファチジルエタノールアミンがLC3-Iに結合してLC3-IIとなることでオートファゴソームの形成が進行する。従って、脂肪酸合成が阻害されれば、オートファジーが阻害される可能性は充分考えうることである。この観察は、(+)-エポジムノラクタムの側鎖の重要性を示しており、様々な側鎖誘導体の前駆体となる末端オレフィン誘導体を合成し、オレフィンクロスメタセシス反応による各種誘導体の合成の検討を行い、上記の誘導体とあわせ(+)-エポジムノラクタムのオートファジー誘導活性における構造要求性を明らかにする。
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次年度使用額が生じた理由 |
3月納品、4月支払いの物品があるため、未使用額が生じた。
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次年度使用額の使用計画 |
未使用額については当該物品の支払いに充てる予定である。
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