研究実績の概要 |
申請者らが発見した新規オートファジー誘導物質(+)-エポジムノラクタム(1)の構造と機能を明らかにすることを目的に、1の全合成を行った。cis-2-Buten-1,4-diolのモノベンジル体2のシャープレス不斉エポキシ化、リパーゼを用いた速度論的光学分割により光学純度の高い(+)-3を得た。合成した(+)-3に対してTEMPO酸化によりアルデヒド4とし、Grignard反応によりエポキシアルコール5を、次いで加水素分解によりジオール6を得た。2当量のNaOCl存在下TEMPO酸化によりエポキシラクトン7とし、アンモノリシスによりアミドアルコール8、次いでDess-Martin酸化により目的とする1を得た。詳細なNMR解析とオートファジー誘導活性から、1の絶対配置を含む構造確定を行った。 (+)-エポジムノラクタムの構造要求性を明らかにするために、鏡像異性体(-)-Epo、脱エポキシ体Deepoxy、鎖状誘導体N,N-Dimethyl、環化型誘導体O-Methyl、側鎖炭素数6の誘導体C6、側鎖炭素数8の誘導体C8を新たに合成した。得られた6種類の誘導体に加え、脂肪酸合成阻害剤Cer、1の合成中間体Amide8を加え、オートファジー誘導活性の評価を行った。結果として、1)1のエポキシ基の存在と天然型の絶対立体配置がオートファジー誘導活性に必須であること。2)1は鎖状型では活性を示さず、おそらくは環化型のラクタム構造が、オートファジー誘導活性に寄与している。3)側鎖誘導体C6およびC8はオートファジー誘導活性を示すが、後期のオートファジーマーカーであるp62タンパク質量を増加させ、かつ高濃度では細胞毒性が観察された。加えて、Cerはオートファジー阻害活性を示すことから、側鎖の炭素数ならびに二重結合の有無が生物活性に大きな影響を与えることが明らかとなった。
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