研究課題/領域番号 |
26450136
|
研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
岡田 憲典 東京大学, 生物生産工学研究センター, 准教授 (20312241)
|
研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
|
キーワード | ジャスモン酸 / 転写因子 / プロモーター / ファイトアレキシン / フラボノイド / イネ |
研究実績の概要 |
抗菌性化合物であるサクラネチンはイネにおいて生産される唯一のフラボノイド型ファイトアレキシンである。その生産はいもち菌の感染や重金属ストレスなどにより誘導を受けることから、代表的なイネの病害抵抗性反応のひとつとして理解されている。本研究課題では、植物ホルモンのジャスモン酸(JA)に強い依存性を示すサクラネチン合成酵素遺伝子OsNOMTの誘導機構を明らかにする目的で、本年度はOsNOMTプロモーターレポータージーンアッセイを進めた。 先ずOsNOMTの上流域5kbから1kbまで様々な長さの領域ををルシフェラーゼ(LUC)遺伝子に連結したレポーターコンストラクトを作製した。こられを用いてイネ葉身にパーティクルガンを用いた遺伝子導入を行い、サンプルをJA有無の条件で処理した。しかし、どの長さのプロモータを用いてもJAによるLUC活性の上昇は認められなかった。そこで、JA生合成変異体を用いたマイクロアレイ解析から選抜された、JA依存的な発現を示す転写因子をエフェクターに用いることで、上記レポーターに対するこれら転写因子のエフェクター効果を評価した。エフェクターにはJAシグナルのマスター転写因子として知られるOsMYC2を含む数種のbHLH、MYB転写因子を用いた。その結果、OsMYC2や新規MYB転写因子による明白なレポータ活性の上昇が認められた。さらに、デリーション解析を行い、これらのエフェクター効果に重要なシスエレメントが転写開始点から25塩基上流の領域に存在する可能性を示した。来年度は、引き続きこの領域に結合する因子の同定を進める。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度に計画していた酵母ワンハイブリッド法を用いた制御因子の探索には至らなかった。その理由として、当初想定していたプロモーターのジャスモン酸による誘導がみられなかったことから、計画を変更しトランスクリプトームの情報をもとにOsNOMTの制御因子候補を絞り込み、それらをエフェクターとした実験系の組直しを行ったためである。しかし、その後、レポータージーンアッセにおいて明白なエフェクター活性を得ることができたため、計画は概ね順調に進展していると考える。
|
今後の研究の推進方策 |
本年度に明らかにしたOsNOMTの発現誘導に重要な役割をもつ転写開始点上流の配列について、さらに詳細な解析を行うと共に、この配列を用いたスクリーニングを進め、結合因子の探索を行う。また、これまでに得たOsNOMTのプロモーターに対しエフェクター効果を示した転写因子については、過剰発現体の作出を進めサクラネチンの生産量変化および植物体における病害抵抗性の変化などの解析を進める。また、来年度はトレニアに導入したOsNOMTによって、フラボノイド代謝経路の改変を新たな課題計画として設定し、OsNOMTの植物種を超えた機能と利用について研究を推進する。
|
次年度使用額が生じた理由 |
本年度所要額160万円の内、約5%となる次年度使用額を生じたが、その理由としては、予定よりも多くの旅費執行が必要となったために物品購入を慎重に進めたため、年度末の1ヶ月前に設定された経理の締めまでの執行が間に合わなかったことが考えられる。しかし、概ね計画通りの執行ができたと考えている。
|
次年度使用額の使用計画 |
次年度の執行予定額とあわせ、ほぼ申請書の計画通りの執行を予定するが、特に研究遂行上必要となる予定外の出張旅費に充当する見込みである。
|