研究実績の概要 |
平成28年度は、大腸菌、肺炎桿菌および緑膿菌を検定菌としてメタロ-β-ラクタマーゼ(MBL)耐性克服活性を有する微生物培養液のスクリーニングを継続して行ったが、強いMBL耐性克服活性を示す培養液は得られなかった。また、β-ラクタム薬と併用した動物実験のために、平成26年度にPaecilomyces sp. FKI-6801培養液より単離した3Z,5E-octa-3,5-diene-1,3,4-tricarboxylic acid 3,4-anhydride(ODTAA)を大量取得した。近日中に外部研究機関と共同でマウスによる感染治療実験を予定している。 期間全体を通じて、1万検体を超える微生物培養液からMBL耐性克服活性を有する培養液のスクリーニングを行った。その結果、一糸状菌の培養液から活性物質を精製し、各種機器分析よりその構造を上述したODTAAであると同定した。本化合物はすでに糸状菌の生産物として報告されていた(J. Chem. Soc., Perkin Trans. 1 (1980) 2134)が、MBL耐性克服活性は新知見であった。また、Penicillium sp. FKI-6957培養物からanhydrofulvic acidを単離・同定した。本活性物質のメタロ-β-ラクタマーゼ耐性克服活性も新知見であった。 一方、直接的なMBL阻害活性はβ-ラクタマーゼで開環することにより色調の変化するニトロセフィンを用いる簡易法により測定した。MBLはMBL産生肺炎桿菌よりクローニングし、BL21で過剰発現させることで精製した。その結果MBL阻害活性(IC50値)は、ODTAAで24μg/mL、anhydrofulvic acidで20μg/mLを示した。両化合物がMBLを阻害することは新知見であった。
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