イネ(Oryza sativa L.)品種シオカリを+Sと-Sの水耕液で栽培すると、根のストリゴラクトン(SL)内生量は-Sで増加し、+Sで減少した。このとき、根のSL生合成遺伝子の発現をリアルタイムPCRで調べたところ、D27 の発現が-Sで著しく増加し、+Sで減少していた。他のSL生合成遺伝子の発現は+Sと-Sで変動が認められなかった。したがって、S欠乏でSLが増加したのは、D27 の高発現によるものと考えられる。SLはイネの分げつを抑制し、葉の老化を促進する。-Sで栽培したイネは枝分かれが減少し、葉が黄化する。そこで、D27遺伝子が欠損した変異体d27をS欠乏で栽培したとき、d27のクロロフィル含量および分げつの数にどのような影響を受けるか調べた。d27を+S条件で栽培すると、野生型に比べて分げつの数が増加した。一方、d27を-S条件で栽培すると野生型は完全に分げつの伸長が完全に抑制されたのに対し、d27は野生型より伸長分げつの数は多かったものの他のd変異体(d10とd14)よりは少なかった。また、d27を+S条件で栽培すると、葉の老化速度は野生型とほとんど変化が認められなかったが、-S条件で栽培するとd27のクロロフィル含量は野生型や他のd変異体(d10とd14)よりも著しく低かった。他の栄養、P欠乏では、d27の分げつやこれらの結果は、D27遺伝子がS欠乏応答遺伝子であり、S欠乏環境への応答に必要であることを示している。また、筑波大学遺伝子実験センターが保有するマイクロトムの変異系統から、TILLINGにより、MAX1およびLBO欠損変異系統を探索した。それぞれSLが欠損して枝分かれが増えた系統を得た。今後、トマトにおけるSLの生合成・代謝経路を明らかにしていく。
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