研究課題
サフラナールを出発原料としてC5ホスホネートとC3ホスホネートによるHorner-Emmons反応の組み合わせ順序を変更することにより合成したビタミンA2アルデヒドの側鎖部分に二重結合を一つ導入した化合物3種類について、タンパク質オプシンと結合実験をした。その結果、いずれの発色団もタンパク質中に取り込まれ新たなチャネルロドプシン(ChR)アナログが生成した。これら3種の新規ChRの吸収極大は、天然のChRの吸収極大(λ max)に比べてわずか10~20 nm長波長シフトしているだけであったが、1/2λ maxの吸収波長を比較すると70~80nm と大きく長波長シフトしていることが判明した。この結果につきコンピューターを用いて発色団の安定コンホメーションについて考察したところ、E値のより安定な発色団ほど1/2λ maxの吸収波長のシフト値が大きくなっており、二重結合を導入する位置としては側鎖12位の後に入れるのが最も効果的であることが明らかになった。他の発色団としては、A1レチナールの4位、あるいはA2アルデヒドの3位から更に二重結合を2個導入して共役系をより伸長させた発色団を合成することができた。今後、タンパク質オプシンと結合するかどうかを検討しλ maxあるいは1/2λ maxの吸収波長がどのようにシフトするか検証する。
2: おおむね順調に進展している
A2アルデヒドの側鎖に二重結合を一個導入することにより、1/2λmaxの吸収波長をみると70~80nmと大きく長波長シフトすることができた。また、A1レチナールの4位、あるいはA2アルデヒドの3位から更に二重結合を伸長させた発色団を合成できたので、この2つの手法を組み合わせて更に長波長側に吸収極大を持つチャンネルロドプシンの開発が期待できようになった。
長波長での吸収極大を持たせる新たな方法として、レチナールのシクロヘキセン環を複素環に変えより長波長吸収を有する発色団の効率のよい合成法を確立する。合成できたアナログは、天然のオプシンと結合するかどうかを検討する。また、これまでにオプシンと結合して生成した新規ChRについては、光挙動を検討し、イオンチャネルとしての機能を発揮できるかどうかを確認する。更に、この結果についてコンピューターを用いた発色団のコンホメーション解析を実施すると共に、より長波長に吸収極大をもつ発色団の設計と合成を行なう。
すべて 2015
すべて 雑誌論文 (6件) (うち査読あり 6件) 学会発表 (5件) (うち国際学会 2件)
J. Agric. Food Chem.
巻: 63 ページ: 1622-1630
10.1021/jf505008d
Mar. Drugs
巻: 13 ページ: 159-172
10.3390/md13010159
Curr. Org. Synth.
巻: 12 ページ: 180-188
10.2174/1570179411999141106102507
J. Phys. Chem. Lett.
巻: 6 ページ: 1130-1133
10.1021/acs.jpclett.5b00291
Photochem. Photobiol. Sci.
巻: 14 ページ: 1694-1702
10.1039/C5PP00154D
Sci. Rep.
巻: 5 ページ: 11081
10.1038/srep11081