研究課題/領域番号 |
26450147
|
研究機関 | 福島工業高等専門学校 |
研究代表者 |
尾形 慎 福島工業高等専門学校, その他部局等, 准教授 (10532666)
|
研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
|
キーワード | リゾチーム / 遷移状態アナログ / 酵素阻害剤 / キチン / オリゴ糖 / 多糖 |
研究実績の概要 |
【①遷移状態アナログ阻害剤の機能評価】キトトリオシルモラノリン(GN3M)とHEWLとの相互作用解析の結果、GN3MがHEWLに対して拮抗型の強い阻害活性を示すとともに、その結合位置は触媒残基が位置する-1サブサイトを含む-4から-1サブサイトであることが示された。これにより、新規遷移状態アナログGN3Mを用いることで、HEWLの共有結合中間体形成に関する新たな実証例を示すことに成功した。また、キトビオシルモラノリン(GN2M)はコケ由来ファミリーGH19キチナーゼと、GN3L(キトテトラオースのラクトン誘導体)はハマグリリゾチームとそれぞれ酵素-基質(阻害剤)複合体を形成し酵素阻害活性を示すことを明らかにした。 【②α-アミラーゼ阻害剤の合成】エキソマルトテトラオヒドロラーゼとマルトトリオヒドロラーゼを触媒素子とした糖転移反応を利用することで、1-デオキシノジリマイシンを末端構造に有するマルトテトラオシルモラノリン(G4M)およびマルトトリオシルモラノリン(G3M)の合成を行った。結果として、G4Mを収量55.2 mg(収率16.5%)、G3Mを収量7.5 mg(収率9.5%)でそれぞれ得ることに成功した。 【③阻害剤合成に使用する糖加水分解酵素のスクリーニングとオリゴ糖誘導体の利用研究】現在我々は、阻害剤合成に基質特異性や位置選択性の観点から糖質加水分解酵素の逆反応を利用している。そこで、フコース含有多糖を分解する酵素の阻害剤合成を目的として新規フコシダーゼの探索を行った。その結果、イトマキヒトデ膵臓より新規α-L-フコシダーゼを発見した。現在、糖転移能も含め諸性質の解明を行っている。また、平成26年度に我々が発見したキトビオース誘導体(GND)がβ-NAHaseによって加水分解されるという事実を受け、現在新たな糖質加水分解酵素の活性測定法の開発に取り組んでいる。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成27年度の研究計画および方法に掲げた、合成したキチンオリゴ糖誘導体(遷移状態アナログ阻害剤)の機能評価および標的酵素の反応機構解析を行った。その結果、使用した3種の酵素{ニワトリ卵白リゾチーム(HEWL)・コケ由来のfamily GH22キチナーゼ・ハマグリ由来のi-typeリゾチーム}それぞれに対する阻害剤の阻害効果および作用機序を明らかにした。さらに、他の多糖分解性保持型グリコシダーゼ阻害剤への利用展開として、1-デオキシノジリマイシンをマルトオリゴ糖末端に有する新規α-アミラーゼ(ヒト唾液アミラーゼやタカアミラーゼなど)阻害剤の設計および合成を行った。また、阻害剤合成に使用する糖加水分解酵素のスクリーニングやオリゴ糖誘導体の利用研究についても計画通り研究を進めた。 以上のように全体的には、平成27年度の計画に掲げた内容は十分達成できている。
|
今後の研究の推進方策 |
平成28年度は、平成27年度に合成したα-アミラーゼ阻害剤の機能評価を行う。これにより、当初の研究計画に掲げたHEWLに対する阻害剤の設計原理が他の多糖分解性保持型グリコシダーゼの阻害剤開発へ応用可能かどうかを評価することができる。また、前年度に引き続き新たな酵素阻害剤の合成も並行して取り組む。さらに、本研究において酵素阻害剤として設計・合成したものの酵素によって加水分解を受ける化合物が数種得られている。阻害剤合成としては不本意な結果ではあるが、これら特徴を逆手にとって酵素の活性測定基質などへ利用展開できる可能性が出てきている。よって、以上のことも含めた幅広いオリゴ糖誘導体の利用研究を推進する。
|
次年度使用額が生じた理由 |
平成27年度に予定していた研究が予定通り進行したため、最終年度の研究に充てることにした。
|
次年度使用額の使用計画 |
平成28年度に予定している、HEWL阻害剤の設計原理を他の酵素阻害剤に適用する研究を行う際の糖質合成及び機能解析の物品購入費に充てる。
|