研究実績の概要 |
①【各種オリゴ糖誘導体(糖質加水分解酵素阻害剤)の機能評価】本研究プロジェクトによって合成した一連の還元末端修飾型オリゴ糖誘導体{GNnM、GNnD、GNnL、GnM(n = 0~4)}を用いて酵素阻害能の評価を行った。キチンオリゴ糖誘導体、特にGNnMに関しては植物由来のエンド型キチナーゼ活性を強力に阻害した。一方、マルトオリゴ糖誘導体(GnM)に関してはα-アミラーゼに対する阻害能が確認された。 ②【還元末端修飾型オリゴ糖誘導体の利用研究】キトビオースの還元末端一分子脱水体であるGNDは、還元末端に2-acetamido-2,3-dideoxydidehydro-glucopyranose (D)構造を有している。このGNDのβ1→4グリコシド結合が切断された場合、遊離したD構造は不安定なためピラノース型を保持できず、発色基質として知られるChromogen I(フラノース型)に構造変換されるのではないかと着想した。これを検証する目的で、GlcNAcのβ1→4グリコシド結合をエキソ型で加水分解するβ-N-アセチルヘキソサミニダーゼ(β-NAHase)を用いたGNDの加水分解実験を行ない、HPLCにより分析した。その結果、β-NAHaseにより加水分解され遊離したD構造は、定量的にChromogen Iに構造変換されることが明らかとなった。さらに、このChromogen Iの発色基質としての特徴を利用して、β-NAHaseの新たな酵素活性測定法の開発に成功した。これらの結果は、本プロジェクトで合成した各種化合物が、糖質加水分解酵素の阻害剤のみならず、様々なものに利用可能であることを示している。 ③【新規オリゴ糖誘導体の合成および酵素の諸性質解明】新たな酵素阻害剤としてメリビオサミンの大量合成および、阻害剤合成に使用する酵素(α-フコシダーゼ)の諸性質解明を行った。
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