研究課題/領域番号 |
26450148
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研究機関 | 独立行政法人理化学研究所 |
研究代表者 |
野川 俊彦 独立行政法人理化学研究所, 環境資源科学研究センター, 研究員 (40462717)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 微生物代謝産物 / フラクションライブラリー / スペクトルデータベース / NPPlot |
研究実績の概要 |
本研究課題の実施計画は以下の4つから構成される。1. フラクションライブラリーの作製、2. ライブラリーのPDA-LC/MS分析、3. NPPlotの構築、4. フラクションライブラリーからの新規化合物探索。平成26年度は上記4項目のうち1および2を中心に行うことを計画していたが、予想以上にフラクション作製が順調に進んだため、3のNPPlotの構築にも着手することができた。 1. フラクションライブラリーの作製:放線菌および糸状菌を約30 L規模で培養し、得られた培養液を有機溶媒(酢酸エチル)可溶性画分と水溶性画分に分配することでそれぞれの抽出物を調製した。有機溶媒画分は、SiO2-MPLC、次いでODS-HPLCによる2段階での分離によりフラクションを作製した。水溶性画分はHP-20、次いでODS-MPLCによる分離でフラクションを作製した。約1600フラクションを作製し、一部をLC/MS分析用および活性評価用に分注後、化合物探索に向けてフラクションライブラリーとして保管した。早い段階で再現性のよい作製方法の規格化を行うことができ順調に作製を進めることができた。 2. ライブラリーのPDA-LC/MS分析:NPPlot構築に向けて作製したフラクションを順次LC/MSにより分析し、約1500フラクションの分析が終了した。これにより各フラクションに含まれる化合物のNPPlotへの登録に必要な全情報(保持時間、分子量情報、UVスペクトル、マススペクトル)を収集した。 3. NPPlotの構築:上記1および2が予想よりも進んだため、LC/MS分析で収集した化合物情報のNPPlotへの登録を開始した。NPPlotは、化合物の保持時間とm/zの値(分子量情報)をもとに化合物を2次元上にドットとしてプロットしていく。UV吸収およびマススペクトルの情報も登録するため、それらをNPPlotで表示可能な形式へ変換した。既にプロットを行ったものには特徴的分布を示すものがあり、NPPlotが菌株固有の化合物探索に有用であることを確認することができた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
微生物代謝産物フラクションライブラリーの作製が予想以上に順調に進んでおり、既に1500を超えるフラクションを作製することができた。それに伴いLC/MS分析を早く開始することができた。そのため、当初計画では2年目以降に予定していた化合物情報のNPPlotへの登録作業に着手することができ、化合物探索へのNPPlotの有用性を確認することができた。
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今後の研究の推進方策 |
微生物代謝産物フラクションライブラリーの拡充とLC/MS分析 再現性のよいフラクション作製方法の規格化を行うことができたので、これをさらに改良するとともに、この方法を用いて引き続き微生物代謝産物フラクションライブラリーの拡充を行う。複数の微生物よりフラクションを作製することで多様性のあるライブラリーとする。作製したライブラリーは順次LC/MS分析を行い含有化合物の情報収集を行う。また、ライブラリーとして活性評価等に利用しやすいように情報も含めて管理する方法を検討する。 化合物探索に向けたNPPlotの構築と化合物探索 ライブラリーのLC/MS分析結果をもとにNPPlotの構築を行う。個々の菌株のNPPlotにおいて特徴的な分布パターンの探索を行うことで菌株固有の化合物群の探索を行う。また、複数の菌株について構築したNPPlotを菌株間で比較できるようにする。このことで、よりはっきりと個々の菌株に特徴的な代謝産物を探索できるようにする。以上の方法により見出した化合物群の単離・構造決定を進める。 実サンプルであるフラクションライブラリーとNPPlotを含めたデータの管理方法を整備することにより、化合物探索を推進する環境を整える。
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次年度使用額が生じた理由 |
フラクション作製方法およびLC/MS分析条件の検討が順調に進み、予想よりも少ない検討時間で方法および分析条件の規格化を行うことができたので、溶媒や試験管、バイアル等の消耗品を抑えることができた。また、フラクション作製条件が適切であったことから、LC/MS分析に用いる分離用カラムの消耗を減らすことができた。以上のことから総合的に消耗品の購入を削減することができた。
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次年度使用額の使用計画 |
フラクション作製が順調に進んでおり、当初予定よりも多くのライブラリーを作製できると考えられるので、そのための溶媒や保管用バイアルなどに使用する。また、成果の発表や情報収集のための学会参加などの旅費や参加費などにも使用する。
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